漂流/吉村昭

漂流 (新潮文庫)』を読んだよ。救われる方法は神に祈ることのみ。

『ジョン万次郎』を読んでから、再び漂流モノに目覚めたアッシ。『ジョン万次郎』の参考文献を調べてみるとジョン万次郎以前にも何人もの日本人が鳥島に漂着しているらしく、それがすでに小説になっている。その一つがこの『漂流』。『ジョン万次郎』では、ジョン万次郎が鳥島で墓石と思われるものを発見しているから、これは『漂流』の長平が建てた仲間の墓なのだろうね。

さて、物語の主人公は土佐に住む水主の長平。それほど遠くない航路を往復する帰路に時化にあい、遭難する。しばらく漂流するうちに、鳥島に漂着するが、船は大破する。仲間4人で無人島での暮らしが始まるが…。

どんな漂流生活だったのか…。
一番大切はものは、食糧。これは実に呆気ない。ある生物が鳥島にはたくさん居るのだ。あとは水。これもたくさんいる生物が助けてくれる。食が満たされると、今度は生きるという気力との戦い。生きる気力を失うことは、この環境では即刻死に繋がってしまうから。

長平は、鳥島に漂着した別の漂流者に、

「さとりとは…、口に出すことも恐ろしいことだが、この島で一生を暮らそうと思うことです。しかし、私には、まだそのようなさとりの境地に達することはできません。どうしても故郷に帰りたいと強く願っています。そこで、せめて帰郷は神仏の意におまかせしよう、それまではあせることも泣くこともやめて達者に暮らそうと思うようになりました。このように考えてから、気持がひどく楽になりました」
と言う。ここに気持ちの葛藤があるよね。悟りに達することは望まない、でもそうしなければ気持ちのやり場が無いんだよね。
結局、鳥島での長平の生活は12年にも及ぶのだけれども、この気持ちがあったからこそ、持ちこたえられたのかもしれないね。

無人島での漂流生活って、想像を絶するものだと思う。そこを脱出する人間の叡智もこの物語の魅力でもあるよね。もう少し、この鳥島を巡る漂流の記録を追ってみようと思います〜。

漂流 (新潮文庫)
漂流 (新潮文庫)吉村 昭

新潮社 1980-11
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