続・悩む力/姜尚中
『続・悩む力 (集英社新書)』を読んだよ。幸福とは何だろうか。
姜尚中の『悩む力』の一応、続編。このところの社会論的な本は「3.11」絡みの話が多いよね。本書も、「3.11」が発生したことで、前作『悩む力』に書き足すべきことが出てきたという感じ。「3.11」以降、日本の社会がどういう方向に向かっていくのか、まさに「悩む」人が多いからね。
ということで、本書は一応「続」とは付いているけれども、それほど前作との関連性はないような…。
とは言え、ここでも登場するのが、夏目漱石とマックス・ウェーバーの両者。現代の問題点は、すでに100年前に彼らは予測していたのだという見解。特に夏目漱石はそれを小説の中に織り込んで表現しているのだとも。それぞれの小説の主人公の言動を事例に見てみると、なるほどなぁ〜とも言えるような…。
そして、「ホンモノの自分探し」を漱石はどう考えるか?
自分探しなんて、本当はすごく疲れるもの。漱石も当初は自我、自尊心にこだわっていたらしいけど、
その親分の漱石にしてからが、「ホンモノの自分を探せ」とは言わず、反対に、「自分を忘れろ」と言っているのです。と変化したのだと。さらに、このホンモノ探しをあおっているのは資本主義であると筆者。
このスキのない魔物のようなシステムは、「商品となるもの」を見つけ出して利用するのが、とてもうまいのです。ことに、“不安”の匂いのするものを利用するのが、とてもうまいのです。と。烏合の衆が動かす市場経済は怖い…。
最後にグローバル化。
社会的な公共の領域が、ことごとく信頼できないものになってきているということ。それは国家しかり。
人びとが名もなく顔もない点の群れとなって媒介項を介さずに目標とつながる直接アクセス型社会になっていることによって、どんどん国家は空虚なものになっているのです。ということ。「脱場所化(脱ポトス化)」は空虚なふるさとを作っているだけだとも。
結局、何が「悩む力」だったのかというと、ちょっと不安な感じ。浮足立たず、じっくりと腰を落ち着けてということだったのかもしないね。
続・悩む力 (集英社新書) | |
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