森に降る雨/関川夏央

森に降る雨 (文春文庫)』を読んだよ。中年男に共感する。

あとがきにあるように、『水のように笑う』の続編的な位置付けの本書。前作は青少年時代のノスタルジー的感覚が強かったけど、本書はもう少し大人の感覚。それでも、話の内容には少年時代の思い出が登場するんだけれども、単なる思い出話ではせずに、この本が書かれた時点での筆者の感覚が強く出ているように思えるよ。

で、前作『水のように笑う』と合わせて読んでみて、筆者の感覚は何だろうか?と考えていたんだけれども、ちょうどその感覚に合う言葉が本書の中に登場。

すなわち自意識過剰なのである。ここでまたふと考える。
そう、自意識過剰の感覚。これがアッシが捉える関川夏央氏の作品。自意識をこれだけ細かく分析して文章にできるって、まさに自意識過剰の世界なのではないかと…。
でも、逆にTVに出席することは自意識をこねくり回す必要がなくてスッキリするという筆者の気持ちもよく分かる。自意識は疲れるんだよね。

もう一つの本書の特徴は、文芸評論。作品の評論ではないけれど、森鴎外とか樋口一葉とか、明治の文豪たちを分析する。これも関川氏らしい分析なので、アッシ的にはグッと来る。

それにしても、関川夏央氏の作品は不思議な感覚。エッセイのようでそうでもなく、小説かと言えば違うような。でも、事実をベースに書いているんだろうけど、どうなんだろって感じ。だから、私小説とも違うような。不思議な後味が残る作品はでした〜。

森に降る雨 (文春文庫)
森に降る雨 (文春文庫)関川 夏央

文藝春秋 1992-11
売り上げランキング : 406966


Amazonで詳しく見る
by G-Tools

応援クリックはこちら→にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ