坂の上の坂/藤原和博

坂の上の坂』を読んだよ。人生を考える微妙な年齢。

本書のタイトルは司馬遼太郎の『坂の上の雲』に引っ掛けたものだけど、では、「雲」ではなくて「坂」とは何か?そう、人生という長い坂を上り詰めて、上り切ったと思ったら、さらにその先には坂があった…というお話。いや、これは単なる笑い話ではなく、これからの我々日本人がハッキリと直面する問題なのかも。
「雲」の時代はリタイアすればゆっくり余生。でも、それほど寿命が長い時代ではないから、そのまま雲に乗っていれば済んだけど、「坂」の時代では定年後がさらに第2の人生と言えるくらい長い。だから、坂の上のさらに坂があるわけ。
前説が長くなったけど、そんな時代に坂の上の坂をどう生きるかということを50歳代のうちによく考えておきましょうよ…というのが筆者の提案。さらに、筆者の経験を踏まえたその指南書が本書というわけ。

さて、ではどのようなことを言っているのか…。
ひとつのキーワードは、これからの日本が進むべき方向性としての「成熟社会」。高度経済成長に日本人全員が進んでいた時代はとっくの昔に終わっているのに、その幻想を追っていては、「坂」を登ることはできない。だからこそ、発想の転換が必要で、そのキーワードが「成熟社会」であると。筆者の説明では、

人が幸せになるためには、自分自身で「何が幸福なのか」を定義しなければならない。それが、成熟社会の姿なのです。結果として、いまだに正解っぽい「モデル」を追っている日本人の不安感は、ますます募っていきます。
と。そう、不安感はここから来るもの。でも、まだまだ続きそうな気配…。

中盤から後半に掛けては、筆者の事例を多く紹介。リクルート時代から、退職してフェローに。そして、和田中の校長から独立へ。結果論だけど、そのすべてが「坂の上の坂」を上るために意味があるものだったような。
そこでの、もう一つのポイントは「企業内自営業者」という概念。会社の敷かれた路線に乗って、単純に出世街道を進むのも人生だけど、それは「坂の上の坂」を上るためにはあまり役には立たないわけ。そこで筆者の考え方は、独立してしまいましょうよ。でも、会社を辞めるのはリスクがあるから、組織に居ながらの独立。これが「企業内自営業者」。自分のスキルを会社に売り込み、それを活かしてもらう生き方。そして、そのスキルが「坂」を上るためにも活かされていく。

その他、地域との関係とか、家族との関係とか、財産とか…。
50歳を過ぎたら、真剣に考えないとなぁ〜ということに気がつかされる一冊でした〜。

坂の上の坂
坂の上の坂藤原和博

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