日本の大転換/中沢新一

日本の大転換 (集英社新書)』を読んだよ。深く思考する人の言うことは難しい。

『3.11以後』に引き続き、震災以後の日本について述べたもの。本書を手に取った時はそれほど真剣に選んだわけではなく、何となく今後の日本を知りたいと思ったから。でも、結局本書の趣旨は脱原発。エネルギーの転換を提案しているよ。

新書としては薄めで150頁ほど。その中で、本論とその補遺が書かれているけれども、補遺は単なる繰り返しのようにしか読めないので、実質は100頁ほどのテキストになっているよ。

で、どのような論旨なのか。
結論としては、原発反対。その理由をエネルギー革命や一神教に例えたり、経済学とリンクさせたり。そうそおう、トポロジーでも表現していることはユニークかも。

具体的には、どのようにそれを表現しているか。
原子力を使ったエネルギー革命を「第七次エネルギー革命」と表現し、生態圏では通常の起こり得る化学反応や電気反応以上のものを取り出す技術と認識し、

これによって、生態圏の「内部」に、ほんらいそこにあるはずのない「外部」が持ち込まれることとなった。
と言い、この思想システムを一神教(モノテイズム)であると。多神教は自然界のあらゆるものに神が宿るが、超越したところに神がいるからという理屈。それは過激な思想であるし、万物に神が宿るが思想は日本人には向いているとも。
そこで「第八次エネルギー革命」の提案。
第八次エネルギー革命は、このような原子力発電に依存する産業形態から離脱して、生態圏の内部に太陽エネルギーを媒介・変換する新しい技術を開発することをめざす、全人類的な運動となっていこうとしていますが、それによって私たちの意識のなかに、長いこと失われていた贈与の次元が取り戻されることにもなります。
と言う。ここでは、さらに「贈与」というキーワードが登場。太陽を「ひどく気前のよい贈与者」として捉え、その恩恵を受けることで、第八次エネルギー革命に対応するモデルは第一次産業であると言っているよ。

東日本大震災以降、いろいろな人がいろいろな事を言っているけど、日本人の論調は脱原発。思想的には筆者の言う通りだとは思うけど、現実的には技術がまだまだ追いつかない感じ。あとはコストの問題だったり。人間の発展の歴史を考えると、第八次エネルギー革命は筆者の言う通りにはならないような気がするんだけど。

日本の大転換 (集英社新書)
日本の大転換 (集英社新書)中沢 新一

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