危機の大学論/尾木直樹,諸星裕

危機の大学論 日本の大学に未来はあるか? (角川oneテーマ21)』を読んだよ。日本の大学の崩壊ぶりは誰のせいでもなく…。

法政大学の教授・尾木直樹氏とミネソタ州立大学機構秋田校の学長などを歴任しメディアにもたびたび登場する桜美林大学諸星裕氏の対談集。特に、尾木氏は中高教員などの教育歴があり、この対談では中等教育との関連の話題が多く、大学の危機は中等教育との関連も強くあることが分かるよ。そして、諸星氏は桜美林大学での改革を進めた人物。その中でも大学アドミニストレーション研究科という大学院でも事例も興味深いよ。

対談に先立ち、序章で尾木氏が大学の今を語る。これがひどい状況。特に便所飯の事例は衝撃的。今の若者はどうなっているのか、アッシには理解不能

そして、対談。
最初の気になる話題はAO入試AO入試の本来の目的はそっちのけで、単なる学生集めに使われているだけの感が強いAO入試だけど、本来の目的に立ち返れば、大学のミッションに相応しい学生を集めるのがスジ。それは学力ではなく面接が重要になるわけで、ところが面接でその学生を見抜く眼力が大学側にない。逆にいうと、その眼力があれば、入試なんて不要だということになるわけで…。
そして、諸星氏が大学の権威を取り戻す方法を提案する。

もし学力試験で優秀な人材がいたとしても、その大学のミッション、教育方針に合わなかったら、勇気を持って不合格にすることです。
うん、これは画期的なアイデア。というか、ごく真っ当な考え方。でも、どこの大学もその“勇気”が無いんだろうね。

そして、諸星氏の改革提案がいくつか出てくるよ。
ひとつが高校4年制。
通常は3年で卒業させる。大学進学希望者はプラス1年を掛けて大学教育が受けられるレベルの学力を担保してもらう。これには、中等教育までの教育の質保証という意味が強いよね。12年間の教育の中で最後の高等教育にしわ寄せが来ているという考え方もあるわけだし。
もう一つは秋入学。
大学業界もグローバル化していかないと海外の大学にも負けていく。これは大学の問題ではなくて、社会の問題として捉えた方がいいよね。っていうか日本の問題か…。
授業も定期試験を入れて16回しっかり実施して、完全セメスター制。12月には後期が終わるようにして、1月から3月はミニセメスターにするという提案。メリットは3年間で124単位取得し、卒業できること。文科省の言っている1年間の履修制限に引っ掛かるかもしれないけど、単位の考え方からは問題はないよね。

最後に、アッシにグサッと来た言葉。

僕が大学院で教えている「大学アドミニストレーション」というのは、大学の経営管理、行政管理の研究科ですから、そこまで考えるのは当然なんです。
と、いろいろな提案が出た後で諸星氏。大学の改革には、まだまだ考えられることがたくさんあるんだよね。すべてをリセットして考え直してみた方がいいね。
危機の大学論 日本の大学に未来はあるか? (角川oneテーマ21)
危機の大学論  日本の大学に未来はあるか? (角川oneテーマ21)尾木 直樹 諸星 裕

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