昭和16年夏の敗戦/猪瀬直樹
『昭和16年夏の敗戦 (中公文庫)』を読んだよ。戦争について知らないことが多過ぎる…。
つい最近、九段下駅の東京メトロと都営地下鉄のホーム壁撤去のニュースがあったけど、その立役者が猪瀬直樹氏。勿論、東京都副知事の立場としてだけど。さて、その猪瀬直樹氏の著書。偶然だけど、『日本人の誇り』と重なる部分があり、先の戦争とは何だったのかを知ることになる。また、本書にも南京大虐殺の記述があるけど、藤原先生の観点ではないので、深く掘り下げることはなかったけどね。
本書は昭和15年10月1日に開設された「総力戦研究所」なる組織に昭和16年4月からの入所した36名の研究生の活動を中心に描かいているんだけど、その活動の中でも、昭和16年の8月に実施した「模擬内閣」という演習が重要なテーマになっているよ。しかも、その「模擬内閣」で協議されたことは、対米戦の開戦か回避かという重要案件。ちょうど、その時期が、第三次近衛内閣が総辞職し、東條英機を首相とする内閣が組閣された時期に一致するわけで、本物の内閣と「模擬内閣」の結論への経緯を並行的に書いているよ。
で、その結論の違いは何か?
東條内閣は、昭和天皇の戦争回避の意向に従うことができず、開戦を決議してしまう。「模擬内閣」は、対米戦敗戦必須という結論を出すというわけ。
東條内閣はどうして、何を根拠に開戦を決議したのか。
本書では液体燃料の需要供給の数字が鍵になったことを詳細に説明しているよ。但し、この数字が曲者。
いわば、全員一致という儀式をとり行うにあたり、その道具が求められたにすぎない。決断の内容より、“全員一致”のほうが大切だったとみるほかなく、これがいま欧米で注目されている日本的意思決定システムの内実であることを忘れてはならない。と言い、単なる「つじつま合わせの数字」と表現しているよ。
さて、最後に東條英機について。
日米開戦の原因を、「東條」という一人の悪玉に帰するのは、あまりに単純すぎる話である。しかし、勧善懲悪の図式は、いまだにひとつの常識である。と、猪瀬氏。
アッシとしては、日本史という歴史の科目として教育を受けて、その図式に組み込まれていたことが分かり、冒頭の「戦争について知らないことが多過ぎる…。」という感想を持ったわけ。まだまだ、本を読まないといけないなぁ〜。
昭和16年夏の敗戦 (中公文庫) | |
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