生態系は誰のため?/花里孝幸

生態系は誰のため? (ちくまプリマー新書)』を読んだよ。メディアの情報を鵜呑みにしないために。

借りてから気がついたんだけど、『ミジンコはすごい!』と同じ筆者。どうりで、ミジンコの話がよく出てくると思った。でも、このミジンコの話が大事。だって、人間には見えないものだから。

と、いきなりミジンコの話になってしまったけど、本書の内容は生態系の話。その事例として、諏訪湖とか白樺湖とかが登場するよ。どうして、湖なのか?それは閉塞性と均一性が高いから。海は開放的で均一性に欠けるから実験には不向きだよね。

まずは、諏訪湖のアオコの話。アオコの発生は富栄養化が原因なんだけど、富栄養化が本当に悪いのか?結論としてはバランスの問題なんだけど、貧栄養化では魚も住めない状況になる可能性もあるわけ。その代り、湖の透明度は上がるよね。だから、透明度を上げるということは植物プランクトンが少ないわけで、当然それを餌にしている魚も少なくなってしまうということ。どうも、世間一般論は誰かを悪者にしているだけのような…。

そして、人間の地球へのインパクトの話。もう一度、諏訪湖の場合に戻るけど、諏訪湖で発生したアオコの諏訪湖へのインパクトはどのくらいなのかを、体長と体積で計算する。すると、人間68億人が地球に与えるインパクトよりアオコのそれの方が大きいという計算が成り立つ。いや、これは比較の問題ではなく、諏訪湖に与えているインパクトと同じ程度に人間は地球に影響を及ぼしていると見た方がいいよね。

そして、筆者の主張。
世間では生物多様性が減少したとかいう云い方をするけれども、生態系全体の変化を意識するべきだと。例えば、佐渡のトキについて、

では、トキがいなくなった生態系をどのように表現したらよいのでしょうか。
私は、“多様性”という言葉をつかうのではなく、そこの生態系の生物種組成や食物連鎖が、トキがいなくなったことでどのように変化したのかを語るべきだと思います。

と云う。これは、良かれと思ってやったことが逆効果になることも有り得るので、十分に認識すべきことなのだとも。そう、自然はいくらでも変化する。その結果が生物多様性なのだから。

外来種の問題も同じ。外来種を除去すればいいという問題ではないのでは?と思うことがよくあるけれども、前述の話からすれば、退治すればそれでいいのか?と思うよね。自然は人間が見守るしかないように思うのだけれども、どうなんだろ。

生態系は誰のため? (ちくまプリマー新書)
生態系は誰のため? (ちくまプリマー新書)花里 孝幸

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