街場のメディア論/内田樹

街場のメディア論 (光文社新書)』を読んだよ。メディアの未来は暗いのか…。

ウチダ先生の「街場」シリーズは、先生の授業内容をまとめた風で編集されているようだけど、今回のメディア論は「メディアと知」という科目が題材。
「メディア」っていうと、昨今の女子大生には興味深いものかもしれないね。出版とかテレビとか、ちょっとギョーカイのヒト風だし、就職にも直結するというか、ストレートだし。でも、それはちょっと気を付けた方がいいかも。メディアにはいろいろな問題点があり、よ〜く考えないと落とし穴が…っていうようなことをウチダ先生が語ってくれる本。

さて、そのメディアの問題点とは何か?
まずは、メディアの価値の判断基準としてウチダ先生が上げているのが、メディアの「危機耐性」という観点。
例えば、インターネットやテレビは電源供給が断たれると使い物にならないわけで、それと比較し、紙というメディアはガリ版刷りに代表されるように、「危機耐性」が強い。そういう観点からメディアの価値を論じる人は全くいないということを指摘しているよ。

さらに、「推定正義」についても。
なにかと事件が起こると、メディアはまず弱者を正義と仮定することが多いよね。それはそれでいいんだけど、では真実が分かった時にはどう対応するのか…。今のメディアは、一度「正義」と既定したものは、それが仮である「推定正義」であってもそれを覆さない。

事実によって反証されたら「推定」をただちに撤回することがむしろ、メディアの中立的で冷静な判断力を保証するのです。
うん、メディアの正義とは、やっぱり怪しいものという印象だよね。

まだまだ、続く。

変化への異常なまでの固執。それは近代のメディアに取り憑いた業病のようなものです。
急激な変化に相応しくないものまで、変化を求めようとする。それは、変化が無ければ、ニュースソースが無くなるから。医療や教育などがその代表格なんだけど、最近の報道にはその関連も多くなってきているよね。結局、自分たちの存在を守るための手段なのか…。

最後は、電子書籍著作権。この話題は、結局は読者不在の中で議論が行われているわけで、本来のテキストを読むとはどういうことかという点が無視されているんだよね。ウチダ先生は、「贈与」というキーワードでこれを説明しているよ。この理路は以前にも読んだことがあるかも。

本書に通底するのは、消費者的発想でメディアを語るのは間違いであるということ。ともすれば、その効率性とかコストの問題として、メディアが語られることが多いんだけど、メディアの本質は全くそれにそぐわないものであることが理解できるよ。さて、本書を読んで、メディアとは何かという問いへの答えに少しは近づけた気がします〜。

街場のメディア論 (光文社新書)
街場のメディア論 (光文社新書)内田 樹

光文社 2010-08-17
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