芙蓉の人/新田次郎

芙蓉の人 (文春文庫)』を読んだよ。今年の冬は寒いけど、それ以上の寒さって…。

きっかけは、『山の遭難』の中で、本書のことが書かれていたので、読みたい本としチェックいたもの。それにしても、久しぶりの新田次郎先生。学生の頃は先生の作品をかなり読んだ記憶が…。大作としては『武田信玄』、その他にも『孤高の人』、最近映画化された『劒岳 点の記』など。元々、山好きだから、山岳小説から入って、山梨の山に興味を持って、ついでにその地方で有名な『武田信玄』までたどり着いたような。その当時、ご子息の藤原先生はエッセイストとして売り出しはじめたばかりだったと記憶。『若き数学者のアメリカ』も読んだけど。

ちょっと前置きが長くなった。
本書は、明治28年に富士山の山頂に気象観測所を私費で開設し、冬期の気象観測を行った野中到・千代子夫妻の物語。実話だけど新田先生が小説化したものだよ。

まずは、時代背景。日清戦争に勝利し、これから日本の国力を世界に顕示しようとする時代。だからこそ、野中到は高地での冬期気象観測で世界に日本の名を轟かそうという情熱を傾ける。妻の千代子の情熱は、夫への愛に支えられる。夫ひとりだけでの観測では無理だと判断し、周囲の反対を押し切って、夫の後から富士山頂に登る。
しかしながら、登るだけでも大変なのに、観測しながらの山頂での生活は壮絶そのもの。寒さ、栄養不足、睡眠不足が続き、二人の体調が整うことはない。

急速に気温が低下していくにつれて、野中観測所が、自然に対して如何に無防備であったかを示し始めていた。ストーブだけでは暖を取れなくなった。いくら着ても寒かった。
とあるように、最大の的は極寒。寒さの中にいるだけでも、相当の体力を消耗するだろうね。

さて、本書は野中夫妻の物語ということになっているけれども、真の主人公は千代子なんだよね。新田先生もそれを意識して書いているんだけれどもね。明治の女性強し。うん、あちこちに「女だから」とか「女性なのに」という言葉が出てくるように、それも時代背景なんだよね。
たまには小説もいいね。久しぶりに一気に読みました〜。

芙蓉の人 (文春文庫)
芙蓉の人 (文春文庫)新田 次郎

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