武器なき“環境”戦争/池上彰,手嶋龍一
『武器なき“環境”戦争 (角川SSC新書)』を読んだよ。世界を動かすものが“環境”とは…。
ご存知ニュースのおじさん池上彰氏と外交ジャーナリスト手嶋龍一氏の対論集。池上氏は多くの人が知っているけど、手嶋氏もワシントン支局長の経歴があるので、顔を見れば思い出す人も多いはず。そして、二人ともNHKの出身だから、旧知の仲という感じ。
二人の話は、2010年4月のメキシコ湾における石油流出事故から始まる。この事故は単なる地球環境汚染の問題ではなく、石油に続くエネルギーの問題を孕んでいると指摘。それが、オバマ大統領の「グリーン・ニューディール」政策を生んだとも言っているよ。
さらにその政策の中身は、「モーダル・シフト」と「スマート・グリッド」。両者が結びついたのが、プラグイン・ハイブリッド車。自動車メーカの戦略としても、いきなり電気自動車ではない理由がここにあるのかも。ハイブリッド車→プラグイン・ハイブリッド車→電気自動車という流れは政策と結びついているんだね。でも、手嶋氏は、トヨタがそれを結びつける感度がよかったかと言うと、そうでもないような見解を述べているよ。面白いね。
そして、環境問題の発端としてのCOP3(京都会議)ではどうだったのか。
手嶋氏は京都会議の黒幕として、イギリスの存在を上げているよ。しかも、“知的ギャング”というあだ名まで付けて。あれだけの会議だから議論が錯綜するのは当たり前、文書をまとめるのは英語。文書をまとめる役を引き受けることで、EU有利にまとめてしまうことは可能だよね。まさに知的ギャングとはピッタリの言葉。この表現を、池上氏は“手嶋ワールド”と称しているけど。
環境問題は新興国にも注目せざるを得ないよね。
BRICs(新興4大国)なんていう言葉を聞くようになったけど、二人が注目するのは、ブラジル。日系人も多いし、あまり知られてはいないけど、世界でも有数の資源大国。鉄鉱石も多いらしいよ。中国、インドに注目が集まっているけれども、日本人的には印象が良くないよね。だからこそ、ブラジルは重要になるということ。日本の外交政策にブラジル対応は重要視されているのかなぁ〜。
21世紀が「環境の世紀」だと言われていることについて、手嶋氏曰く、
軍艦、核兵器、CO2−−この3つは、すべて「削減」をテーマに俎上にのせられました。人類が生み出してしまったこれからのモンスターを、自らの意思でどこまで減らすことができるのか。そこに人類の叡智が問われているのです。と。なるほど、確かに過去を振り返るとそうだったね。まさに戦争と同じ。
「環境を読めば世界が見えてくる。」と池上氏が言うように、環境問題で世界と丁々発止できる日本でなければ、ダメなんだよね。それにしても、日本人。環境問題が政治問題、経済問題と結びついているという発想が出来ているのかなぁ〜。なんだか、「チャレンジ25で頑張ろう」という掛け声運動っぽくなっているような気がするんだけど。
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