ウェブで学ぶ/梅田望夫,飯吉透

ウェブで学ぶ ――オープンエデュケーションと知の革命 (ちくま新書)』を読んだよ。世界の潮流に乗り遅れそう…。

「オープンエデュケーション」という世界で起こっている大学教育界の新たなムーブメントについて、梅田望夫氏と飯吉透氏が語る。
飯吉氏はオープンエデュケーションについて、何年もアメリカで体験してきた人物。梅田氏はご存知ウェブの可能性についての著書多数。つまりは、オープンエデュケーションがウェブの力を借りて、爆発的に進化している潮流が世界で起こっていることを二人が対談で紹介するよ。

まずはマサチューセッツ工科大学(MIT)のオープンコースウェアOCW)を紹介して、オープンエデュケーションとは何かを説明しているよ。
cf. http://ocw.mit.edu/index.htm
まずは、このサイトを見てビックリ。工学系のあらゆる分野に渡って、その授業ビデオや教材が公開されているということ。しかも、MITって私立大学なんだよね。元はと言えば、これらの知的財産を売ることを考えていたらしいんだけど、まったく売れず。で、逆転の発想で、無料で公開ってことにしたらしいよ。

MITだけではないよ。カーネギーメロン大学の「オープン・ラーニング・イニシアチブ(OLI)」は単に教材を公開するだけではなく、誰にでも使いやすい教材を設計・開発して公開しているとか。公開することで教材の質も高まり、ユーザが増える。さらに集合知が発揮され、改良されていく。正のスパイラルが起きるわけ。

これだけ世界中にウェブ上に学習コンテンツが増えてくると、自前のカリキュラムや講義を用意しない大学も出てくるわけ。それが、「ウェスタン・ガバナーズ・ユニバーシティ(WGU)」。

同大学は、学生が十分な知識や技能を持ち合わせていることが試験やレポートで確認されれば、「学生が何を使ってどのように学んだかに関係なく、基準に従って単位を認定し、必要な単位数が揃えば学位を授与する」という、まさに学生がオープンエデュケーションをフルに活用できる仕組みを備えた新しいタイプの大学です。
さらに学費も安く、短期間で学位が取得できることもメリットだよ。はぁ〜、スゴイ世の中になったもんだ。

では、本当にオープンエデュケーションで真の教育はできるのか。前述のWGUできちんと単位を取れる人はやっぱり少ないだろうと。「学校」という教育を受ける強制力をもった枠組みが必要なのではないかという二人の意見は確かにそうだと思う。

さらに、キーワード的には、「教育のロングテール化」。いわゆる「多種少量」の教育が可能になるわけ。学びたいと思っても、身近にはそれを教えてくれる人がいなければ、あくまで独学で学ぶしかないわけ。ところが、オープンエデュケーションでは、世界中の誰かがその教材を作っていれば、そこから学ぶことは可能になるよね。まさに、ウェブの進化による賜物だよね。

さて、最後は、オープンエデュケーションとグローバル・プラットホームの関係。グーグルのようなグローバル・プラットホームに世界中のオープンエデュケーションが公開されるようになれば、これも相乗効果的に両者が進化していくことになるわけ。なんだか、すぐ先の未来のようにも思えるけど。

さて、我が身を振り返ると、なんとも悲しくなる。日本の大学もJOCW(http://www.jocw.jp/index_j.htm)なる組織を立ち上げてはいるけど、その内容はまだまだお粗末。というか、日本の大学関係者にオープンエデュケーションという概念すら頭に無いのではという印象。正月から、今年の日本の大学を憂えてしまったわ〜。

ウェブで学ぶ ――オープンエデュケーションと知の革命 (ちくま新書)
ウェブで学ぶ ――オープンエデュケーションと知の革命 (ちくま新書)梅田望夫 飯吉透

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