『パンセ』数学的思考/吉永良正

『パンセ』数学的思考 (理想の教室)』を読んだよ。結局、パスカルって何者?

「数学的思考」に引かれて、思わず借りてしまった本書。みすず書房と言えば、何となくアカデミックな雰囲気のする書店だし、装丁もまさに抽象的で、いかにも精神の緊張を伴いそう。実際にそうだったし。
とは言え、基本的に高校生向けみたい。岩波ジュニア新書やちくまプリマー新書にコンセプトが近く、≪理想の教室≫というシリーズもの。

さて、本書。
パスカルの『パンセ』をテキストとして、筆者の解釈を述べた本。主に、パスカルの思想と考えを考察しているよ。宗教と数学が中心になっているけど。

まずは、そのテキストを読む。アッシとしてはいきなり精神の緊張を伴う読書。でも、我慢して読む。分かることは分かる。例えば、無限について。

これらの無限から見れば、有限なものはすべて等しい。
いきなりだけど、これは数学的思考だよね。数学的に無限の概念が登場するのはニュートンの時代になってからだけど、パスカルはそれに近づきつつあったんだよね。
このことを、筆者は次のようにまとめているよ。
パスカルは自然を見たままに観察していたというよりも、数学的な構想力によってそれをモデル化し、そこに無限から無までを貫く一様なフラクタル構造を想定していた、と言えるのではないかと思います。
現実を超えた先に何があるのかが見えていたということなんだろうね。パスカル、やるなぁ〜。

同様に、パスカルがその著作の中で実施したと書いてあるいくつかの実験については、推論した思考実験だったのではないかという研究者の話を紹介。パスカルならば、それは有り得るだろうと筆者。今までの話を思い出してみれば、頷ける話だよね。

最後は、パスカルと現代との認識論的な前提の違いについて。
それは、歴史性の有無にあると筆者。パスカルの思考には時間性がない。数学も然り。つまりは、

パスカルの思想が徹頭徹尾、数学的思考をベースにしてきたことの証といえるのではないでしょうか。パスカルの心、神を直感する心のはたらきも、根底においては強靭で時代を超えた数学的思考によって支えられていたのではないかと、わたしは思います。
と。

数学的思考は現実を超越しているよね。だからこそ、普遍的概念を導き出せるのだろうね。身につけたいなぁ〜。普通にこういう思考が出来るように。でも、普遍的って、極めて常識的といっても、言いよね。ビジネスの現場でも役に立つと思うけど。

『パンセ』数学的思考 (理想の教室)
『パンセ』数学的思考 (理想の教室)吉永 良正

みすず書房 2005-06
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