ルリボシカミキリの青/福岡伸一
『ルリボシカミキリの青』を読んだよ。福岡ハカセの著作裏話集。
福岡先生が「週刊文春」に連載しているコラムをまとめたもの。本書で福岡先生は自分自身を「福岡ハカセ」と表現しているので、ここでも今後は「福岡ハカセ」を使うよ。
コラムだから、基本的はちょっとした話。特に、以前の著作の裏話だとか、エッセンスが多いよ。福岡ハカセの小ネタ集といったほうがいいか。
例えば、
男は女よりも少しだけ足りない存在として生まれてくるのであり、それに気がついたのは女性だったのである。というフレーズは、『できそこないの男たち』でも出てくる話。これを福岡ハカセの虫好きに結び付けて展開するよ。
時には大学教授としての顔を覗かせる。
教育することの悩みを綴ったコラムには、
あるとき数学の先生が教えてくれた。関数、関数って教科書に書いてあるけど、これはほんとうは函数と書くんですよ。つまり函があってこっちから数をいれるともう一方からポンと別の数が出てくる。そういう仕組みが函数なんです。という事例を紹介し、教員は気づきのヒントを与えられればよいと言う。そう、自ら気がつけば、自分で学習していくものなんだよね。
最後は福岡ハカセの専門分野の分子生物学。
がん細胞はDNAのコピーミスがひとつの要因であるという話。しかしながら、コピーミスが起こらないと生物の進化は有り得ない。まさに矛盾。
福岡ハカセは、ふとゲーデルの不完全性定理のことを思い出した。「決定不可能な命題が、その体系内にかならず存在する」という数学上の定理である。ここには何かしらがんというものが問いかける逆説と共鳴する諦観のような響きがありはしないか。と言い、生物学と数学に橋を架ける。そう、そういう発想がいいよね。引き続き、福岡ハカセの今後の著作に注目です〜。
ルリボシカミキリの青 | |
福岡 伸一 文藝春秋 2010-04-23 売り上げランキング : 2087 おすすめ平均 才能のきらめき。 詩的な文章。 理系と文系の橋渡しをさせたら日本一 リズムが良く、読み切り易い短編生物エッセイ集 Amazonで詳しく見る by G-Tools |