里山の少年/今森光彦

里山の少年 (新潮文庫)』を読んだよ。夏は少年時代を思い出させる季節。

琵琶湖の湖畔、仰木という地域を中心に日本の里山を紹介する活動を続ける今森氏。氏の岩波ジュニア新書の著作は何冊か読んでいたけど、単行本が文庫化されたものを読むのは初めて。基本的にはエッセイなので、琵琶湖畔の里山の様子を綴るのは、岩波ジュニア新書のものと同じ。ただ、タイトルにあるように、「少年」がキーワードになっていて、氏の少年時代の思い出と一緒に里山が語られているよ。

例えば、白いセミの話。
友人が白いセミを見つけたと見せてくれる。それは単に羽化直後に弱ってしまい、普通の色に変化出来なかったセミだったわけだけど、友人も筆者も興奮気味。そう、少年時代って、そういう発見って新鮮な気持ちになれるんだよね。

オニグモ退治の話も。
筆者が小学生だった当時はどこにでもいたというオニグモ。弟と祖母と三人でのオニグモ退治。子供達はゲーム感覚なんだけど、お婆さんは真剣。しまいに「悪い虫やから」と踏んづけまでする。でも、そのオニグモは見かけなくなる。

最後に、三百歳の畦道が無くなる話。圃場整備という土地改良事業。土地を効率よく使うには必要なこと。でも、その犠牲が畦道だ。そんな地方の風土をかもし出すもの、風趣にとんだものがみんななくなっていくことに対し、

昔のように、季節の中で自然と対話しながら、それこそ試行錯誤をして田畑を耕していた頃の「労働」というものは、「蓄積される仕事」のことであり、たいへんな価値をもっていたように思う。「労働」が使い捨てになってしまった今となっては、とにかく楽に早くやらねば取り残されてしまう時代になってしまったのかもしれない。
と筆者。そう、消費の時代。蓄積とか積み上げるとかが敬遠される時代なんだよね。本来は消費にふさわしくない事柄までも。見直されなければいけないよね。
里山の少年 (新潮文庫)
里山の少年 (新潮文庫)今森 光彦

新潮社 2010-04-24
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