青春を山に賭けて/植村直己
『新装版 青春を山に賭けて (文春文庫)』を読んだよ。こんなに凄い人だったとは。
凄い人とは本書の著者植村直己氏。アカスカのマッキンリーで消息を絶ち、かれこれ20年以上は経ったはず。あの時は、あぁ残念だなぁという思いだけだった。でも、本書を読んでみて、氏がまだ活躍していたら、さらにどんな凄いことをしていただろうという思いが強くなる。
で、本書。植村氏の半生記。主に五大陸最高峰の全てを登頂するまでのもの。途中、アマゾン川のイカダ下りが入るけど、ほとんどが山への挑戦だよ。
挑戦の始めは、明大山岳部のヒマラヤ遠征に参加することから。ゴジュンバ・カンへに遠征隊員としてただ一人登頂する。ところが、その栄光をよそに、遠征隊の準備に骨身を削ったわけでもなく、他の隊員の誰よりも自分は劣っていると感じた植村氏は、
どんな小さな登山でも、自分で計画し、準備し、ひとりで行動する。これこそ本当に満足のいく登山ではないかと思ったのだ。という思いを胸に、それ以降、単独登山に挑むことになる。
そして、マッターホルン、キリマンジャロ、アコンカグアの各大陸の最高峰に単独登頂するよ。アコンカグアの登頂の後は、アマゾン川のイカダ下りまでしてしまう。恐ろしいほどの体力と気力だよね。日本に一旦帰国して、日本山岳会のエベレスト遠征に参加し、第一次アタック隊として登頂に成功する。五大陸最高峰の最後は北米大陸の最高峰・マッキンリー。これも単独登頂に成功。氏の最期がマッキンリーだったのが、なんとも皮肉だけど。
それにしても、大自然の中でたったひとりとはどんな感じなのだろうかと思うけど、氏は概して「楽しい」と表現しているよ。例えば、アマゾン川では、
漕ぐこともなく、自然に動くイカダに、前途の恐ろしさも忘れて小躍りした。とか、マッキンリーの山中の雪洞での停滞では、
私はシュラフの中で、エベレストのこと、アマゾン河のイカダ下りのことなど、過去のできごとを思いうかべた。それは実に楽しかった。という。まったくの余裕だよね。
本書の最後はグランド・ジョラス。この壁との闘いは本書の中で最も壮絶だけど、ここでも過去の思い出を胸に自分は死なないと言い聞かす。
植村直己という人物。この半生の記だけでも、十分なくらい凄い生き様だけど、マッキンリーに散るまではさらにいろいろなことに挑戦するんだよね。もっと、氏のことを知りたくなりました〜。
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