アップル、グーグル、マイクロソフト/岡嶋裕史
『アップル、グーグル、マイクロソフト クラウド、携帯端末戦争のゆくえ (光文社新書)』を読んだよ。クラウドのイメージが広がる。
副題は「クラウド、携帯端末戦争のゆくえ」。タイトルからは想像できない副題だけど、要はクラウドに対するそれぞれの企業の戦略を解説したもの…という感じ。
まずはクラウドとは何か。そこには「仮想化」という技術が関連してくるよ。仮想化の技術はハードウェアを軽視する思想に繋がっていくという論理が面白いよ。つまりは、仮想化によって、ハードウェアを次々に乗り換えていくってこと。グーグルのデータセンターはまさにこれの思想で作られているというのも驚き。コンテナに多数のサーバが格納されていて、しかも野ざらしだとか…。壊れたら修理もしない。別のデータセンターに切り替えるだけの話。
クラウドサービスの提供において、ハードウェアなどというものは単なる汎用品であり、置換可能な消耗品である。端的に言って、クラウドの牽引者たちはハードウェアなどどうでもいいと思っている。まさにクラウドだね。それにしても、うちのデータセンター。ハードウェアを異常なほど大事にしているなぁ〜。
そして、各企業のクラウド戦略が出てくるわけなんだけど、ここでも、クラウドとは各企業間の新たな戦場であり、「その先にオープンな世界が待っているわけではない」と釘を差す。クラウドはユートピアに思えるのは幻想なんだよね。この点は要注意。
では、各企業の戦略は如何に。
マイクロソフトは、あちら側よりこちら側の世界の覇者。だから、クラウドはその戦略の逆の発想。だから、すべてをクラウドにするのではなく、手元(オンプレミスと表現している)にも残し、両者を組み合わせるという戦略を立てているよ。
グーグルはどうか?クラウドといえばグーグルというイメージがあるけれど、グーグル自身はクラウドには興味がない。すべては情報そのものを整理することに興味があるわけで、当然戦略が違うよね。だから、グーグルに言わせると情報の整理をとことん突き詰めていくとクラウドに行き着いたというだけの話なんだろうね。それがブラウザのOS化、つまりはクロームOSに繋がっていくわけ。
ここで、アップルが出てくるのはなぜか?普通はアップルとクラウドは結び付かないよね。ここで登場するのはiTunes。アップルストアと結び付くことでひとつのクラウド世界を構築する。戦う土俵がマイクロソフトやグーグルとは違うんだよね。そして、iPod/iPhone/iPadというハードウェアと一体化した戦略は見事だよね。
さて、最後は日本のクラウドについて。
日本企業も頑張っているのだけど、頑張り方が違うのだと筆者。
日本企業が腐心するのは、ルールが与えられたときに、その枠内で最高を目指すことである。規制や境界条件の内側での競争だ。なんだか、日本人的だよね。でも、世界で勝つためにはルールブレイカーにならないとダメなんだよね。辺境人には出来ない発想なのかなぁ〜。って言うか、最初からその気が無いのが辺境人なんだよね。
クラウドと言えば、巨大堅牢なデータセンターをイメージするアッシ。でも、世界のクラウドは全く違う方向を向いているのを知りました〜。
アップル、グーグル、マイクロソフト クラウド、携帯端末戦争のゆくえ (光文社新書) | |
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