人間の建設/小林秀雄,岡潔

人間の建設 (新潮文庫)』を読んだよ。これで会話が成り立っているのか…。

数学者・岡潔と批評家・小林秀雄の対談。元々は、小林秀雄の全集に収録されていたものを底本としているよ。小林秀雄と言えば『考えるヒント』。アッシ的には積読本の一冊なんだけど、手が出ていない状態。これをきっかけにとは思っているけど。一方の岡潔は幾つか本を読んでいるから、様子は掴める。言いたいこともわかる感じ。

で、二人の会話。
岡潔が最近の数学は抽象的になったという話から始まって、知性と感情について語る。

矛盾がないということを説得するためには、感情が納得してくれなければだめなんで、知性が説得しても無力なんです。ところがいまの数学でできることは知性を説得することだけなんです。説得しましても、その数学が成立するためには、感情の満足がそれと別個にいるのです。
岡潔。そう、岡潔の持論的には、知性と共に情緒だから、こういう思想になるんだよね。でも、確かにそう。頭では分かっても、何となく腑に落ちないってことがあるわけで、それがここでいう感情の満足なんだよね。

さて、岡潔の情緒の話も落とせない。

赤ん坊が母親に抱かれている、親子の情はわかるが、自他の別は感じていない。時間という観念はまだその人の心にできていない。
このような状態を「情緒」と定義しているよ。さらには、
私の世界観は、つまり最初に情緒ができるということです。
とも。それに対する小林秀雄の返答もユニーク。
岡さんのお考えは、理論とは言えない、ひとつのヴィジョンですね。
と。いや、批判しているわけではなく、面白いという意味で言っているわけで。
ただ、こんなやりとりが本書の中でアチコチに見受けられ、それぞれの本音がどこにあるのかを想像するのも、本書の楽しみのひとつだったりして。

どうも岡潔の話ばかりを追ってしまったような気がするけど、実際に喋り続けているのは岡潔の方。中盤でのドストエフスキートルストイを巡る議論は両者引き分けって感じだけど、全体的には毒気の強い岡潔の勝ち!!でした〜。

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