あなたにもわかる相対性理論/茂木健一郎

『あなたにもわかる相対性理論』を読んだよ。アインシュタインの脳の使い方。

去年の9月にPHP研究所から創刊された「PHPサイエンス・ワールド新書」。そのNo.1が本書。No.1というのはともかく、新書好き、科学好きのアッシにとって、この新書の創刊はなにげにうれしいもの。今現在でも読みたい本が続々と発刊されて、目移り且つうれしい悲鳴。

で、創刊No.1の筆者となったのが、茂木さん。テーマはアインシュタイン。本のタイトルは『あなたにもわかる相対性理論』なので、相対性理論がテーマかと思うけど、その解説は必要最小限。アインシュタインの伝記というか、アインシュタインの人生を通して、その理論を概説するっていう感じ。

では、アインシュタインの研究に向かう態度とはどんなものか。それは、常識と呼ばれることに立ち戻り、批判的態度で疑って見ること。かのカール・マルクスも、「そもそも貨幣とは?労働とは?」と前提を問い直すことで革命を起こしたわけ。アインシュタインが学生時代に読んだエルンスト・マッハの著書には、ニュートン力学という当時の常識に対しての問題提起があったが、アインシュタインの態度も同じだったという。
そこでアインシュタインが根本の原理として考え直したことは何か。それは「同時である」とは何か?ということ。その結果、「同時である」ことは自明でも何でもなくて、不可思議な結論を見いだす起爆剤にもなり得ることがわかったのだと。
そう、常識の上に立っていては改革はできたとしても、革命は無理なんだろうね。

アインシュタインの信仰心も興味深いよ。一般的な宗教は信じず、無宗教者だったけれども、この宇宙をつくった神と、宇宙の秩序に対しては、深い畏敬の念を抱いていたという。そして、「どの宗教を好むか」と聞かれ、

「世界の前にみずからを啓示する高い理性への深い直感的な確信が私の神の概念です。それ以外には、私は伝統的宗教との関わりを持ちません」
と答えているのだとか。
そして、その後には、「宇宙宗教」という言葉まで発しているようだよ。宇宙の秩序を知れば知るほど、その偉大さに驚き、畏敬の念を感じるのは誰しもあることだよね。それそのものを神と捉えることが、またアインシュタインの偉大さなのかもしれないね。

相対性理論アインシュタインの認識論的な考え方は、芸術の世界にも影響を与えたとか。
例えば、パブロ・ピカソキュビズム。画家の視点が一点ではなく、さまざまな視点から対象を描写し、それを相対的に並べるキュビズムは、さまざまな慣性系から世界を見た相対性理論を彷彿とさせる手法ではないかと茂木さん。サルバトール・ダリの『記憶の固執(柔らかい時計)』も然り。シェーンベルクに代表される無調音楽も然り。
そう、この芸術への影響の事例は、相対性理論を理解するのに分かりやすい例かも。

茂木さんの科学解説本は珍しいかも。それに、アインシュタインに憧れていたなんて…。相対性理論の解説本は幾つか読んでいるけれども、相対性理論そのものを幾つかの視点で見るのもまた喜し。そう、まさに相対的な考え方だよね。

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