この国のかたち〈3 1990~1991〉/司馬遼太郎

『この国のかたち〈3 1990~1991〉』を読んだよ。こんなにも日本史が面白いなんて。

『この国のかたち』シリーズの3冊目。3冊目くらいになると、マンネリとかパターン化するなんてことが一般の書籍ではよくある話なんだけど、どうも本書はその傾向がまったく無し。アッシ的にはますます日本史が楽しくなり、学校のときにこういう日本史を教わっていればなぁ〜なんて思う。

まずは、筆者が得意の明治維新。欧米で見習うべき国はたくさんあった。日本はなぜかドイツに傾斜していく。医学がドイツ、憲法がドイツ、陸軍がドイツ。筆者もこれは「なぜ?」と叫びたくなるくらいだとも言っている。その結果、

いえることは、ただ一種類の文化を濃縮注射すれば当然薬物中毒にかかるということである。そういう患者たちに権力をにぎられるとどうなるかは、日本近代史が動物実験のように雄弁に物語っている。
となる。動物実験…。それにしても、手厳しい動物実験だったわけだ…。

アッシが注目したのは、明治14年の東京物理学校(今の東京理科大学)の創立の経緯。東京大学の理学部物理学科の卒業生が夜間の私学を興したという。しかも、資金は維持同盟の会費を集めることで賄ったという。まさに私学が寄附から成り立つという原点のような。さらには、東京大学の教員や実験機材などを借りることで授業を行っていたとも。昼間は東京大学で教え、夜は実験機材を運んで東京物理学校で授業なんてことをやっていたとか。

官物が私的に使われることはゆるされることではないのだが、あえて大学はこの便法をとった。配電盤が、国家の将来のために志をもって漏電していたのである。
と。さらには、明治、法政、中央、専修、日本などの神田の法律学校も夜に開講していたのは、東京大学教授の都合に寄ったとか。つまりは、
神田の私学は地縁のおかげで、いわば私的に電流を流してもらった。
と。なるほど、地縁というか、あえて電流を流してもらうために神田を中心に学校が集まったんだろうね。

東京への遷都についても、アッシの知らなかったことが…。
大久保利通らは、京都を離れ、大坂に遷都しようとしていたのだが、ある人物からの投書により、江戸への遷都を決めたという。その投書は、大きな構想力を持った意見で、精密な思考が明晰な文章で述べられていたという。投書の主は前島密。今の東京の発展は彼の構想力のお陰。こうしてアッシが東京で暮らせるのも、彼があったことなのかと思うと、なんだか不思議な感覚。

それにしても、明治維新。メディアに頻繁に登場する人物だけでなく、いろいろな人物があってこその明治維新。改めてそれを思った1冊でした〜。

この国のかたち〈3 1990~1991〉
この国のかたち〈3 1990~1991〉
文藝春秋 1992-05
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