正義で地球は救えない/池田清彦,養老孟司

『正義で地球は救えない』を読んだよ。環境問題は何度読んでも厭きさせない。

『ほんとうの環境問題』と同じく、養老先生と池田先生の共著。本書の中で『ほんとうの環境問題』を前著と言っているから、続編という位置付けなんだろうけど、独立して読んでもまったく違和感無し。勿論、重複する部分もあるけど。
だから、このエントリーも繰り返しになるかもしれないけど、アッシは気にしない…。

前半は池田先生。地球温暖化は本当に悪なのか、いやそうではないだろうという論調。メリットもあれば、デメリットもある。要は、温暖化を止めるのではなく、気候変動に対応するしかないということ。

今ある状態をベストだと保守的に考える人は、あらゆる変化を「異常」ととらえてしまう。しかし変化に適応する知恵や技術を開発したほうが合理的である。
と筆者。止められない温暖化を「止めましょう」と言うのは土台無理な話。地球に逆らってどうするのかということなんだよね。

排出権取引についても断固反対を貫く。結局、マネーゲームになってしまうからだと。アッシもそう感じる。CO2削減がビジネスになっている。本当の地球のことを考えているのか…。

『ほんとうの環境問題』に書かれていたことがやはり繰り返される。「環境問題とはつまるところ、エネルギーと食料の問題である。」と。さらに本書では、食料問題から人口の問題も登場するよ。

このままの人口で、生物多様性保全し、なおかつ食物やエネルギーを持続可能な形で賄っていくというのはあまりに矛盾が大きい。逆に言えば、人口が減少すればさしあたってエネルギーの問題も食糧の問題もほとんど解決する。人口が減れば減るほど自ずと生物多様性保全されやすくなるだろう。
と云う。日本の人口も結局減らしたほうがよい。年金問題だけ解決すれば、こども手当なんて…。

後半は、養老先生と池田先生の対談。
対談の中で、石油のピークアウトの問題について触れる。CO2排出抑制キャンペーンは何のためなのか。つまりは、中国やインドに石油を使うなといっているのだという新しい視点。代替エネルギーの開発に成功すれば、石油ピークアウト時にまた覇権を取れる。但し、その開発には石油が必要。だから、西側諸国がアジアの新興諸国に対し、予防線を張るわけ。結局、欧米はCO2削減なんて本気で考えていないってことだ…。

あとがきで養老先生がいつもの脳化社会の問題を指摘。

社会システムは、現代では脳、つまり意識によって作られる。その意識が上手にできているという生物学的な保証なんかない。でも、ほとんどの人は、その社会システムの内部でしか生きられないようになっている。つまり、サラリーマンである。
あ〜、アッシもサラリーマン。システムさえ無事に動いていれば、「問題はない」とする人だ。意識の産物が肥大化して、自然そのものが見られなくなっているんだよね。これから、どうなる環境問題…。
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