リーダーは半歩前を歩け/姜尚中
『リーダーは半歩前を歩け』を読んだよ。金大中事件は遠い昔の記憶…。
姜尚中氏の新刊が本屋に並ぶとまずはパラパラと捲ってみる。本書も難しくなさそうということで、即図書館に予約。最近の氏の著作はさらっと読めるものが増えてきているよう。どうもアッシ的には氏の本は難しめという印象なんだけど、それは初期の著作だけなのかも。
では、本書。副題は「金大中というヒント」。第4章が筆者と金大中氏との対談になっているけど、その対談をベースに、筆者がリーダーシップとは何かということについてまとめたもの。
まずはリーダーリップ論が今になって再燃してきているという話。
自由になりすぎているために逆に「自由からの逃走」を人々は求めている。つまりは、「支配」と求める心境になっているのだと。ところが、それはリーダー待望とは逆の理由もある。つまりは、「責任の所在」の確保。
これはとてもずるい考え方で、「リーダー」を求めているのではなく、ただ「スケープゴート」と求めているだけです。
そう、どこかの国の首相は簡単に責任を取って辞めていく体質だよね。
そして、金大中氏のいう「半歩前」というキーワード。
これは獄中での読書で得たものだと。情報化が進み、個のアイデンティティーが多元化していくと、人々は共同幻想を抱きにくくなる。これでは一つの目標に向けてすべてを動員することは難しくなる。
だから、微妙に行きつ戻りつし、人びとの文脈を読みながら、柔軟にリーダーシップを発揮していくのがベストだと考えたのです。まさに「半歩前」を行くんだね。一緒にでもなく、後からでもなく、ホントに微妙な位置だけど。その位置取りにも神経を使うよね。
第2章は筆者のリーダーシップ論。
アッシが思うリーダーシップ力は「決断力」。筆者はこれを次のように言い換える。
リーダーの最終的な力量は、どれだけ孤独の重責に耐えられるかという、「孤独力」と言ってもいいのです。と。どんな情報を集めても、どちらに転んでも正解が見えないときがあるよね。まさに孤独の中での決断だよね。
第3章では戦後の日本の政治について。
安倍政権が掲げた「戦後レジュームからの脱却」という言葉の意味がよく分からなかったアッシ。ここでの解説ですごくよく分かったよ。日本の一党政治を、日本がアメリカにはめられた「巨大なおむつ」と比喩し、リーダーならざるリーダーがリーダーシップを握ってきたと解説。
それゆえに、自民党はいいかげんおむつかぶれしながらも、ごろごろと一人、ベビーベットの中で寝返りを打ちつづけたのです。これが、リーダーとフォロワーの関係を断ち切り、政治への無関心をはびこらせたのだとも言っているよ。これを読むと、自民党も被害者なのか…とも思えてくる。
最後に金大中氏の言葉。
日本の民主主義はマッカーサーが来て、プレゼントしてくれたものではないですか。だから、民主主義の基盤がはっきりしないのかもしれないですね。<中略>なんとなく手に入れてしまったから、あまりありがたいとは思わない。だから、「昔もよかった」などどいう。<中略>歴史をきちんとみないからです。損ですよ。戦争に負けたことを政治に生かせなかったのか…。はっきりしないのは、はっきりさせたくない日本人だからということも考えられないかなぁ〜。いいような、悪いような…。
最近話題の東アジア共同体構想。アジア版EUを念頭に置いているようだけど、金大中氏はどう思うか聞いてみたいところだが、今年亡くなったのが残念…。
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