グーグル・アマゾン化する社会
『グーグル・アマゾン化する社会』を読んだよ。Web2.0は社会の思想まで変えてしまうのかも。
前半は、タイトル通りグーグルやアマゾンの話題を中心に、後半はWeb2.0の世界が社会にどういう影響を与えていくのかというような観点を語った本。IT技術だけではなく、ちょっと社会科学系かも。
さて、アマゾン。筆者は「参加のアーキテクチャー」と捉えているよ。つまりは、アフィリエイト、リスト・マニア、カスタマー・レビューなどがその典型のツールだよね。
そして、グーグルは「半強制的な参加のアーキテクチャー」と捉えている。アドセンス、アドワーズがその代表格。
ここでひとつ、新たな発見。ロングテールと云う言葉は、以前から知っていたけど、その意味としては、売れ行きの少ない商品を多数販売すれば、それも多大な利益になるという風に理解していた。ところが本書では視点を変えて、Google AdSenseをロングテールと捉えているよ。つまりは小さな小売店がWeb中に広がっているイメージだね。なるほど、少量多品種とはそういう意味で捉えてもよいわけだよね。
もうひとつ、目からウロコ。
グーグルは単にデータベースを設計したのではなく、世界中のウェブデータそのものを、データベースにしてしまったということだ。これは何を意味するのか。ひとつは、グーグルに認知されなければ、存在しないことと同じになってしまうということ。もうひとつは、グーグルはWebのコピーを所持しているということ。何とも不思議な感覚だけど、そういうことだよね。
続いてのキーワードは、「スケールフリー・ネットワーク」。ネットワーク用語では、ノードという考え方があるけれども、それに加えて、あるノードが他のノードより優先的に選択されるような状況になれば、一気にそのノードに繋がるネットワークが増えていく現象を意味しているよ。つまりは、アマゾンもグーグルも優先的に選択されたノードだというわけ。これは、「金持ちはますます金持ちになる」とか「長いものには巻かれよ」という思想に繋がっていくんだよね。
タグとパーソナライゼーションについても。投稿した画像データや動画にタグを付ける機能をよく見かけるけど、あれは検索を容易にするもの。そして、膨大な情報から「あなた」だけに特化した情報を絞り込んでくれる。便利だと思う。SNSやポータルサイトのマイページも同じ考え方。これについて、筆者は「集団分極化」を懸念する。
もともとネットワーク上では、考えが異なる別の集団の意見を排除し、同じ集団内で考えが極端に偏るという傾向が指摘されているためだ。まさに情報の流通が偏るわけだね。
さて、これらのキーワードから、何が言えるのか。社会的な意思決定において、「みんなの意見は案外正しい」とか、「発言量の多さに引きずられる」とか。これはアーキテクチャとしての結果なのかも。
それでも、多少納得しかねる部分も。少数意見を封じ込めないための仮想空間という考え方があってもいいんじゃないかなぁ〜。
とは言え、2006年の発刊だけど、内容的に古びていないのは、驚き。つまりは、思想の変革の問題だからか…。
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