日本を教育した人々

『日本を教育した人々』を読んだよ。頭がよい人は生き方が違う…。

以前、齋藤孝氏と梅田望夫氏の対談集は読んだけど、齋藤氏の単独本は初めて。

さて、本書。
幕末から明治に掛けての日本の近代化にあたって、政治的に活躍した人は多いけど、教育の視点から活躍した人は誰?っていうとすぐには思い浮かばないかも。
そんな視点から、4人の人物に注目し、日本の基盤をどのように作っていったかを紹介した本。ここで、「作る」とは「教育する」と読み替えてもよいよ。

まず一人目は、吉田松陰。松蔭は人柄としては落ち着いた人物であったと。その松蔭が孟子のテキストを読んで興奮し、熱く語るという。このように、書物を読むことで興奮することができるのが「教育する人」のひとつの素養であるのではないかと筆者。

読んでみたらわかるが、「孟子」はそれほど興奮するような本ではない。しかし、一見地味に思える本当に優れたテキストを見つけてきて、それがいかにすばらしいかを、自らの素直な心の動きや感動を交えて語ることができるのが、人を教育する人である。
そう言われて思い出した。高校の時、数学III三角関数微分積分を習った。その時の教員曰く、「おまえらよぉ〜、文系のやつらは三角関数微分積分を知らないで、死んでいくんだぞ〜。悲しいじゃないか。お前ら、幸せ者なんだから、しっかり勉強しろよぉ〜。」。
ちょっと観点が違うか…。

二人目は福沢諭吉。有名どころは勿論『学問のススメ』。じゃ、その学問って何か?「学び続ける態度を教える教育」がそれではないかと筆者。「学問を活用し、それを支えとして生きていくのだ」ということを身をもって示してきたということだとも。
そうだ。学ぶとは生きることなんだったよね。それは経済的な為では決してない。阿部謹也先生も同じことを言っていたような。

三人目は夏目漱石漱石は、これから日本人はいったいどうあるべきかを考えたという。それをどう表現したかというと、小説により「悩み方の教育」を施したのであると。これが、漱石ならでは教育スタイルであると。

四人目は司馬遼太郎。名前は聞いたことがあったけど、どんな人物でどんな作品があるのか知らなかったから、興味深く拝読。
司馬の作品は幕末から明治に掛けての時代が多い。それは、閉じていってしまう時代より、拡がっていく、希望にあふれた時代を書きたいという気持ちがあったからだと。そして、「昭和は精神に悪い」とも言ったと。希望にあふれた時代とは、司馬的にはまさに明治であったのだろうね。そして、『「明治」という国家』という本の中で、「明治という国家を、立体とひとつの物としてここに置いて考えてみたい」と述べているという。
ひとつの時代をひとつの国家として捉える視点。それをまたひとつの立体として捉える視点。やっぱり頭のいい人の視点は違うと思う。

さて、以上の4人に共通すること。
日本人がこれから生きていくのに、諸外国に翻弄されず、且つ自身をしっかり持つために、どうしたらよいかを教えてきたんだと思う。それがすぐに頭の中でイメージできたからなんだよね。頭がよいっていうのはそういうことなんだろうね。
あ〜、アッシは相変わらず何にもイメージが湧かないなぁ〜。

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