暗号解読

『暗号解読』を読んだよ。人間の考えることってスゴイ…。

同じ作者(サイモン・シン)の『フェルマーの最終定理』がすごく面白かったので、夏休み期間中のこの時期に本書に挑戦。文庫本2冊で722頁もの長編ドキュメント。
でも、期待通りの面白さ。数々の暗号解読の手法を懇切丁寧に説明しているし、それ以上にそれらの暗号に関わる人々にまつわる話が面白い。とにかく長いけど、まったく飽きさせず、一気に読破した感じ。

出だしは、スコットランド女王・メアリーの暗号を話題に取り上げ、暗号の基礎的な手法を紹介しているよ。単純な転置式暗号と換字式暗号を取り上げ、カサエル・シフトや単アルファベット換字式暗号などを実録を伴いながら説明する。そして、その解読手法も。解読なんて考えてもみなかったけど、よ〜く考えてみると解法が見つかるのだから、すごいよ。
で、冒頭のスコットランド女王は、暗号が解読されてしまった為に斬首されてしまったのだけれどもね。

解読可能な暗号は使われなくなる。そこで登場したのが、ヴィジュネル暗号などの多アルファベット換字式暗号。これはかなりの強力な暗号で“解読不能の暗号”とまで呼ばれたとか。
…ところが、人間の知恵はすごい。登場するのは、コンピュータの雛形を作ったを言われるバベッジ。天才だ…。

そして、人々の間に暗号が浸透する。エピソードとして語られるのが“ビール暗号”という実話。さらに、軍用目的での利用にまで発展するわけ。ドイツの暗号機・エニグマの誕生だ。
このエニグマも凄いよ。よくぞ、ここまで考えたと思うくらい、創意工夫の集大成。
…ところが。
結局、エニグマも解読されてしまう。
さらには、チューリングによってエニグマ暗号の解読機械まで作られてしまう。
ふ〜、どうなっているんだ。人間の欲望とか向上心とか、底知れないものがあるのを感じずにはいられない…。

途中で、ロゼッタストーンなどに代表される古代文字の解読などの話題が混じる。ここでも解読の手法が、いままでの暗号解読の手法が使われているのが面白い。

終盤は、電子通信の発達に伴った新たな問題としての、鍵交換システムの問題を取り上げているよ。RSAPGPなど。
ここで活躍するのが数論などを駆使した数学。モジュラー演算などは、『フェルマーの最終定理』にも登場していたよね。一方向関数では素数の乗算がその鍵となっているし。

いや〜、これは本当に面白い。読ませる筆者の筆力も凄い。翻訳もよいと思う。『フェルマーの最終定理』も面白かったけれども、どちらも人間を描いているドキュメント。
この夏休みの最高の一冊に出会えました〜。

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