新しい太陽系
『新しい太陽系』を読んだよ。太陽系はドンドン新しくなる〜。
筆者は、太陽系小天体の観測研究が専門、国立天文台の情報センター長。ここまで書くと普通の天文学者って感じだけど、冥王星が惑星か否かの定義を確定した国際天文学連合「惑星定義委員会」の委員っていうと一味違うよね。
本書は太陽系を構成するさまざまな天体を取り上げて、その全体像を説明、そして、冥王星が惑星というカテゴリから外れた理由を説明しているよ。当時の新聞では降格といった印象が強かったけど、結局、太陽系のことを知らなければ、その本当の理由は理解できないわけだからね。
そんなわけでプロローグでは、太陽系を観測するツールの技術発展について述べているよ。天体望遠鏡の発明に始まり、星図の整備や天体力学の発展、写真技術の革新、そしてCCD素子の発明など。これらは新しい太陽系の解明に貢献しているってわけ。
この後は、太陽系の要素についてそれぞれを解説。
まずは太陽。
太陽の中心部の核融合反応で生まれたエネルギーは光になって放射として外に向かって行くのだけれども、太陽の中心部は押しくらまんじゅう状態の物質の中でなかなか外に出られなくて、表面に達するまで、数十万年から一千万年くらいかかるといわれていると。つまり、太陽の表面で光り輝いているエネルギーは少なくとも人類が文明を築く以前に生まれたものであるということになる。これはビックリ。
単に我々が燃えるというイメージで捉えていたものとはまったく違うわけだよね。核融合反応なわけだからね。
さらに月の話題も面白い。
月は1年に3センチずつ地球から遠ざかっていっているという。その理由は、地球が月の公転に比べて高速で自転しているからだと。そして、エネルギー保存の法則から、地球の自転は(10万年に1秒ほどの割合で)次第に遅くなるという。これもまたなんとも不思議な話。っていうか、当たり前なんだけど、ここでもニュートン力学が通用しているっていうのが微妙な気分…。
ニュートン力学といえば、木星の衛星イオに火山活動があったという話も力関係。木星との潮汐力で形が歪められ、内部に熱を持つ。この熱で硫黄などが溶け出し、表面に噴出してくるという。う〜む、恐るべし力。それだけ、質量がデカイってことなんだろうけど。
さて、いよいよ冥王星の話。冥王星にはカロンという衛星がある。ところが衛星と言えども、大きさは冥王星とあまり変わらない。となると、衛星というより、二重惑星と呼んだほうが適切ではないかと筆者。
そんな訳で、冥王星を含む太陽系外縁天体の話。これらは微惑星から惑星へと成長する途中の段階のまま、凍ってしまった天体だと。だから、太陽系天体の分類は、その生成の過程を知ることが重要なんだよね。単に冥王星が惑星から外されたという心象だけの話ではないってこと。
太陽系外縁天体は、太陽系形成初期の惑星成長の過程を現在に至るまで保存している化石といえるのである。と、筆者。
ということで、冥王星が格下げされたことについて、いろいろと意見があるんだろうけど、成長過程という観点を盛り込んで結論を出したことは、アッシには非常に分かりやすく思えるんだけど。あとは、心象の問題だけなんだよね。
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