にっぽんの知恵

『にっぽんの知恵』を読んだよ。日本人は日本人論とか日本論が好きだと思う。

筆者が、各テーマにそって、その分野で明るい人物を集め、共同討議という名の対談を行う。それをまとめたもの。

テーマはさまざま。勿論、日本人の特徴をよく表すものが選ばれているよ。

「花見」では、群桜、群衆、飲食の三要素があると。ところが、それは日本人だけの感覚。英語のcherryはサクランボ。つまり食べるのが目的になっている。桜の花を表すには、cherry blossomと言わなければならない。ここには欧米人と日本人の気持ちの持ちようの違いが映し出されているのではないかと。

「サル学」では、ダーウィンの進化論の捉え方について。「サルと人間の祖先は共通だった」という話に対し、日本人は「そうだと思っていた」と面白がるが、アメリカでは「そんなこと、聖書には書いていない」と猛反発があったとか。

「ありあわせ」では、百姓という言葉の意味について。これは、その時どきに、さまざまな稼ぎ仕事をする人々といった意味の「百の姓」だと。これは、近代日本の高度成長を支えた、いわゆるゼネラリストの祖先としての意味を持っていたのではないかと。

「缶コーヒー」では、“一息入れる”には二つの意味があると。「他の誰かと一息入れる」と「独りで一息入れる」だ。これは大きな違いだよね。

と、まだまだテーマは続くんだけど、本書の底流には、矛盾を自然に肯定する日本人という考え方が流れているように思う。本書的に表現すれば、論理的に矛盾があっても「ちょうど好い加減」が最適なんだという考え方。これは、憲法第9条に表現されているとも云う。そう、これが「にっぽんの知恵」の真骨頂だと。

いい悪いは別にして、そういう意味では「にっぽんの知恵」が通用しない時代になっているような気がするなぁ〜。

にっぽんの知恵 (講談社現代新書 1923)
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