タテ社会の人間関係

『タテ社会の人間関係』を読んだよ。1967年発刊だけど、いまだに読み継がれているみたい。

「世間学」の原点かと思っていたけど、ちょっとニュアンスが違ったかな。副題は「単一社会の理論」。あとがきにもあるけれども、単なる日本人論ということではなく、たまたま日本が単一社会だっただけ。でも、日本人の特質を述べた本なんだけどね。

で、その「単一性」のキーワードは、「場」による集団の形成、平等主義、同類との競争、感情の優先する世界の形成の4つ。

「場」による集団の形成では、以下の引用が象徴的。

日本社会は、全体にみて非常に単一性が強い上に、集団が場によってできているので、枠をつねにはっきりしたおかなかれば−−集団成員が自分たちに、つねに他とは違うんだということを強調しなければ−−他との区別がなくなりやすい。そのために、日本のグループはしらずしらず強い「ウチの者」「ヨソ者」意識を強めることになってしまう、という集団構成の質のあり方が問題であろう。
で、「ウチ」がすべての世界になってしまうという。

そして、平等主義は序列偏重を生む。誰もが能力的に平等ならば、序列として別のスケールが必要になってくる。それが学歴であったり、生年であったり、入社年であったり。先輩後輩という「タテ」意識の強さが十分に理解できるよね。

ワン・セット主義という考え方も面白いよ。「タテ」意識が強いから、ウチの中で何でも屋になってしまう。何でも屋がたくさん存在すれば、それが同類との競争になる。デパートか総合大学とかがワン・セット主義の事例として上がっているよ。確かに「ヨコ」意識が強ければ、連携体制になるはずだよね。

最後は、感情の優先する世界の形成。これは、頭に「論理よりも」と付く。しかも、それが重要な社会機能を持っているという。

日本人の価値観の根底には、絶対を設定する思考、あるいは論理的探求、といったものが存在しないか、あるいは、あってもきわめて低調で、その代わりに直接的、感情的人間関係を前提とする相対性原理が強く存在しているといえよう。
このことは、前に述べた、リーダーと部下の力関係における接点としてのルールの不在、人と人との関係における契約によって表現される約束の不在ということによっても、遺憾なくあらわれているところである。
このルールの不在という点も「タテ」社会の特性。ルールが無くても、柔軟に権限がタテに移動するってわけ。いいような悪いような…。

とにかく、日本は社会構造的に特殊な社会であることがよ〜く分かったよ。でも、それが効果的に働く場合も有り、逆効果となることもあるってこと。その点をよく知った上で、世渡りしていくのがいいってことなんだよね。

タテ社会の人間関係―単一社会の理論 (講談社現代新書 105)
タテ社会の人間関係―単一社会の理論 (講談社現代新書 105)中根 千枝

講談社 1967-02-16
売り上げランキング : 6335

おすすめ平均 star
star日本社会は、40年前から変化していない。
star秀逸な社会構造論
star民族のメンタリティは簡単には変わらない

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

応援クリックはこちら→にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ