大黒屋光太夫
『大黒屋光太夫』を読んだよ。07/28/2005に投稿した『大黒屋光太夫』とは違う本だよ。
題名は同じだけど、岩波新書から出ていたよ。だから小説とは違うよ。2004年2月が初版だから、参考文献に吉村昭の『大黒屋光太夫』が載っている。二匹目のドジョウってやつかも…。
小説とは違うって書いたけど、その通りに資料の引用で史実を忠実に再現しようとしているよ。だから、『おろしや国酔夢譚』とも吉村版『大黒屋光太夫』ともちょっとづつ違っている。
例えば、神昌丸乗組員にしても年齢とか出身地とか詳細だし、特に帰国後の光太夫たちの記述についてはかなり詳しいね。ロシア側の記録はそれほど資料的には残っていないだろうから、他書との差異が日本側の資料でしか出せないんだろうね。そういう意味で、『おろしや…』は帰国後の記述が弱かったし、吉村版『大黒屋光太夫』も『おろしや…』よりはその部分でボリュームはあったけど、あくまで小説の域を出ない。特に時の幕府の動きの中で光太夫たちがどう位置付けられていたかが本書で明確になったよ。
唯一、小説とは違うところ。それはやっぱり表現だよね。旅の過酷さ、冬の寒さ、夏の蚊や虻の襲来…、小説は表現力が違う。小説だとグイグイ引きこまれていくけど、本書はアッサリ書かれているよ。う〜む。そんな訳で、どちらかの小説を読んでから、本書を読むことをお勧めするよ。
大黒屋光太夫 (岩波新書) | |
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