ゾウの時間 ネズミの時間/本川達雄
『ゾウの時間 ネズミの時間―サイズの生物学 (中公新書)』を読んだよ。時間は誰にでも平等だと思っていたが…。
筆者の本川達雄氏は歌う教授。NHKの番組「爆笑問題のニッポンの教養」にご出演の際も、ハンディカラオケ風を片手に妙な歌を歌っていたっけ?しかも、あの番組ではナマコの話をしていたように記憶しているから、サイズの話は出なかったような…。
そんな訳で、以前から筆者の名前は知っていたし、中公新書ではちょっとしたベストセラーっぽい扱い。最近、新潮新書からも新刊を出し、アッシ的には、思い出したように本書を手にとった感じ。
全般的には生物学の本。小難しい話はほとんどなく、基本的には動物のサイズの話。あとは、そこから発展して、形態とかデザイン、機能の話まで広まっていく。
さて、早速サイズの話。動物はサイズによらず、心臓の鼓動回数も呼吸の回数も同じであるという計算結果があるという。具体的には、時間は関係のある現象がすべての体重の1/4乗に比例する。でも、物理的時間では、ゾウは100年近く生きるわけであり、ネズミは長くても数年。心臓の鼓動を時計として考えれば、ゾウもネズミも生きた感覚時間はまったく同じなのではないかという結論になるわけ。うん、結局、何が言いたいかと言えば、動物のサイズがその生態にいかに大きな影響を与えているかということ。それが本書のねらいだとも言っているよ。
時間の話は、動物のサイズとの関係のほんのひとつの事例にしか過ぎない。進化との関係のあるし、エネルギー消費量との関係もある。それが、行動範囲とか移動の速度、体の構造や細胞の差異にも現れてくる。
最後にひとつの事例。ヒトデやウニなどの仲間を棘皮動物というけれども、彼らは中枢神経が発達していない。けれども、
棘皮動物では中枢神経が発達していないが、ただつっ立っていても食べていけるものに、複雑な神経系などいらない。活発な動きをする動物だからこそ発達した神経系が必要になるのである。もし棘皮動物を「頭が悪い!」と軽蔑するなら、「悪知恵を絞らなければ生きて行けない生活をしている方が、よっぽどバカだ」と言い返すこともできるだろう。と解説しているよ。うん、どの生物のサイズに適した生態を持っているということだよね。
それにしても、地球上には摩訶不思議な形態をした生物がたくさん生息しているよね。でも、その形態はそれぞれに理由があり、その形態だからこそ生き残れたということもあり、人間様が「摩訶不思議」なんていう権利は毛頭無いんだろうけどね。
ゾウの時間 ネズミの時間―サイズの生物学 (中公新書) | |
本川 達雄 中央公論社 1992-08 売り上げランキング : 2398 Amazonで詳しく見る by G-Tools |