アホ大学のバカ学生/石渡嶺司,山内太地

アホ大学のバカ学生 グローバル人材と就活迷子のあいだ (光文社新書)』を読んだよ。タイトルほど毒舌でもなく…。

筆者は『最高学府はバカだらけ』の石渡嶺司氏と大学研究家と言われる山内太地氏。前著『最高学府はバカだらけ』と同様に、昨今の大学研究家事情、特にバカっぽいところをあれこれと紹介したもの。サブテーマとしては、グローバル化と就活。これは、今の日本の大学事情としてはタイムリーな話題だよね。

では、どんな事情か?
バカ学生のことはひとまず置いておいて、アホ大学から。最近、多いのが長ったらしい学部名。何たらコミュニケーション学部とか、やたらにカタカナを連発するとか。その他にインパクトが大きいのが校名変更。これも多い。でも、本当にそれが効果があるのか?校名やロゴはブランドの構築なんだろうけど、それが成功した事例はほとんどないという。ブランディング会社の某氏曰く、

「例えば『日本で一番卒業しづらい大学』など目標を定め、それに沿った教育改革をする。ブランド構築に成功した一般企業と同じように時間をかければ、定員割れの大学でも再生は可能です」
と。うん、やっぱりブランド構築の前に教育目標だよね。いい悪いはまったくの別問題だけど。

そして、就活。
「すごい学生」である必要はないのに、就活生はどうしても自分をすごい学生であると「盛る」。その必要はまったくないと筆者。「すごい学生」は事例にもなるし、メディアにも取り上げやすいからね。この点を、

ごくまれにではあるが、本当にすごい学生がいて、彼らは確かに就活もうまくいく。すごいエピソードがてんこ盛りなので、マスコミの就活特集にも登場しやすい。就職情報会社・コンサルタントもこういう学生を派手に持ち上げる。そうすれば、クライアントの企業に対しても「うちを利用する学生には、こういうすごい学生がいますよ」と宣伝できるからだ。
といい、彼らにとって「普通の学生」は商売の邪魔以外の何物でもないと。やっぱり、単に利用されているだけだわ…。日本の構造はどこでに変わらず。

最後は「特進クラス」の話題。中高ではよくある「特進クラス」だけど、大学でもいわゆる「特進クラス」と同様な戦略が増えてきているという話題。
要は、赤字覚悟の予算を投入して、広告塔となるべく教育を展開する作戦。設備や教育をだけでなく、卒業生の活躍などが話題になれば、それなりに効果があるかも。ただ、一方で筆者の心は揺れる。

できない学生、優秀ならざる普通の学生、バカ学生を変えていくのも大学の使命ではなかっただろうか。あるいは地味な研究をコツコツと進めるのも大学の使命ではなかっただろうか。
と。うん、いや、そうだけど、それは棲み分けるということだったんじゃないか?それぞれのビジョンと教育目標があるんだから…。

と、色々と書いてきたけど、大学関係者を応援したいというあとがきでの筆者の言葉は嬉しいような複雑なような。結局は大学が話のネタになっているわけだからね。でも、ネタにならないより、なった方がいいか…。

アホ大学のバカ学生 グローバル人材と就活迷子のあいだ (光文社新書)
アホ大学のバカ学生 グローバル人材と就活迷子のあいだ (光文社新書)石渡嶺司 山内太地

光文社 2012-01-17
売り上げランキング : 5667


Amazonで詳しく見る
by G-Tools

応援クリックはこちら→にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ