土壇場力/井端弘和

土壇場力』を読んだよ。読売の選手だけど…。

そう、前回の井端の著作『勝負強さ』を読んだ直後のことだったと思う。突然のドラゴンズ退団、そして読売への入団。ビックリもなにも、あ然として何も言えず。
で、本書はその『勝負強さ』と同時に図書館に予約したもの。今年になってようやく読めたくらいなので、かなりの予約数があったはず。今は読売の選手だけど、ドラゴンズの一時代を築いた選手。やっぱり読んでみるべし。

前半は井端が野球を始めてからプロで活躍するまでの話なので、『勝負強さ』と重複することが多いよ。
この中での登場し、井端が心に残しているのが「人と違う感性を持て」と野村克也氏から言われた言葉。出身高校の堀越高校時代の監督にも「あとは自分の感性だからな」という言葉を受ける。この言葉の対する井端の解釈は、「信念を曲げずに貫き通す」ということ。例えば、

まず最悪のパターンを考えておいて、最低限の準備をしておきながら、最高のほうにちょっとずつ持っていく。いきなり最高を考えることはない。
と。うん、イケイケドンドンではないってことで井端らしいよね。

後半は、『勝負強さ』には書かれていないWBCの話。
そして、自分自身の勝負強さについて、

WBCの活躍のおかげで、僕は「勝負強い」と思われているらしいが、自分自身では、勝負強いと思ったことはない。ただ、しつこさは持っていると感じる。
と分析しているよ。このしつこいという意味は突き詰めるのが好きだということであるとも。確かにしつこいバッターは嫌だよね。
個人的には、読売に移っても気になる選手だけど、対ドラゴンズ戦での活躍はお断りしたいなぁ〜。
土壇場力
土壇場力井端 弘和

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進化/山本昌,山崎武司

進化』を読んだよ。大器晩成型の二人。

中日ドラゴンズの大ベテラン、山本昌山崎武司の共著。2013年4月発行だから、山本昌は30年目、山崎は27年目の現役シーズン直前。amazonで検索したら、山本昌は記念すべき30年目のシーズンということで、いろいろと本を出していたんだね。

本の構成としては、ひとつひとつのお題が出て、それに対して二人がそれぞれでコメントするという形。それでも、二人の性格の違いはコメントを読んだだけで分かるよ。山本昌はコツコツ型、山崎はイケイケドンドン型。正反対の性格だよね。でも、仲がいい。その不思議。

で、山本昌の考え方。練習するのは、朝に歯を磨くようなものだと言う。

朝起きて歯を磨き、朝食をとるといった生活習慣となんら変わりはないのだ。
だから、練習は苦にならないとも。うん、こういう考え方が好き。癖にしてしまうとか、やらないと気持ち悪いとかいう状態がいいんだよね。

もうひとつは、超プラス思考。

「こうすればできる」と常に考えるのが、山崎の言う「超プラス思考」なのだろう。
ダメならどうしよう…」と考えたら、先に進まない。どうすればできるかを考えるんだよね。これも好き。いかにもコツコツ型の思想だよね。

さらに、

「結局、野球選手でいることが一番楽だな」
山本昌。だからこそ、これだけの長い期間、プロ野球選手としてやってこれたんだろうね。

おっと、山崎の話が出てこないけど、最後も山本昌。山崎との対談で、

ただ、彼が言うように、僕は意外と無駄な努力が苦にならないタイプではありますよね。
と言う。うわぁ、これも最高!そう思うアッシは山本昌型なんだけど。

山崎は2013年のシーズンでついに引退したけれども、山本昌にはもっと頑張ってほしいなぁ〜。

進化
進化山本 昌 山崎 武司

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勝負強さ/井端弘和

勝負強さ (角川oneテーマ21)』を読んだよ。井端の情報って少ないから。

ご存じ今年のWBCで活躍した中日ドラゴンズ・遊撃手の井端弘和選手。山本監督をして、「神様、仏様、井端様」と言わせた大仕事は記憶に新しいけれども、結局、これが本を出すきっかけになったみたい。どちらかというと地味な選手だし、何度もゴールデングラブ賞を取っているけれども、基本的に全国区ではないから、現役中に本を出すとは思ってもみなかったから。

さて、WBCであの活躍で一躍全国区になったわけだけど、あの絶体絶命の状況での一撃はどうして生まれたのか。それはプレッシャーをはねのける力。井端自身は、

プレッシャーをはねのけ、勝負強くなるための特効薬は、普段の真剣な練習にあることに早く気がつくことなのだ。そういうプレッシャーの局面を想定した練習を続けると、「自分はできる。絶対に成功する」という自信が生まれてくる。
と言っているよ。そして、実際にそういう場面を体験するのが一番だとも。

もう一つは“ケセラセラ”。究極の楽観主義だと言っているよ。それは、幾度も体験する怪我や目の病気との闘いから生まれたもの。これは意外。そうは見えなかったから。

そして、プロ野球の世界に辿り着く方法について。

僕は小さいころから夢を描いて、そこに向けて逆算のマネジメントをしてきたわけではなかった。よく夢をあきらめるなというが、僕の場合は違っていた。本当に目の前にある目標やテーマをひとつひとつ、こなすうちに、考えもしなかった世界が近づいてきたのだ。
と。これも、スーパースターではない井端らしいよね。

最後に、遊撃手へのこだわり。遊撃手で出場できなくなったら、それは引退であると言っているよ。だから、本書の筆者紹介の記述は、“内野手”ではなく“遊撃手”なんだろうね。そっか〜、まだまだ、アライバの二遊間は見てみたいなぁ〜。谷繁監督の選手起用は如何に、なんだろうけど。まぁ、ケセラセラで行きましょう。

勝負強さ (角川oneテーマ21)
勝負強さ (角川oneテーマ21)井端 弘和

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新編 単独行/加藤文太郎

新編 単独行 (ヤマケイ文庫)』を読んだよ。竹内洋岳氏との違い。

昔々に、新田次郎の『孤高の人』を読んだことがあったけど、その原点というべきものが本書になるのかな。『孤高の人』も新田氏の詳細な取材のものと書かれているんだけど、何と言っても本人が書いたものが最初の資料になるわけだし。
ということで、本書は『孤高の人』の主人公である加藤文太郎氏が書いたエッセイというか記録というか諸々の文章をまとめたもの。文中には山岳文学という表現まで登場するけれども、実際はそこまで言うのは、言い過ぎのような…。

では、どんな記録なのか。
主に、日本アルプスの山々を冬期に単独縦走したもの。その他に、加藤氏の地元の但馬地方の山々を巡った時のもの。こちらもほとんどが冬期だけど。
そして、加藤氏の凄いところは、その行動の速さ。しかも、長時間の活動。
例えば、昭和5年の年末から翌年の正月にかけての山行では、

加藤は風雪に悩まされながら野口五郎岳を越えるところまで前進し、雪洞を掘って二時間ほど休み、吹雪をやり過ごした。雪洞を出ると、強風ながら月夜で視界がよくきいた。烏帽子の小屋に着いたのは午前二時。十九時間の行動だった。
と、まさにトランスジャパンアルプスレース並みの速さと行動時間だよね。

では、加藤氏の素顔は…というと、一介の設計技師。だからというわけではないだろうけど、何と無く生真面目風が文章のあちこちに漂ってくるよ。
頂上には特に変わったものがないと分かっていても素通りできないと書いてあったり、ほとんどの山頂で必ず万歳三唱していたり。

最後に加藤氏が考える山に来る目的。

自分は「山と闘うために来た」のではないか。
とハッキリ言っているよ。そこが冒頭の竹内洋岳氏との違い。ただ、このセリフも吹雪で動けなくなった時だから、自分を鼓舞するものだったのかもしれないね。

凄い人には違いないけど、その人間性は極々普通の人。不安だったり、自信を持ったり、挫けそうになったり。そんな加藤氏が分かっただけでも、本書を読んでよかったと思うのでした〜。

新編 単独行 (ヤマケイ文庫)
新編 単独行 (ヤマケイ文庫)加藤 文太郎

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頂きへ、そしてその先へ/竹内洋岳

頂きへ、そしてその先へ』を読んだよ。プロ登山家らしく。

プロ登山家・竹内洋岳氏の本、3冊目。3冊とも比較的最近読んだから、以前の2冊と重複する部分が多いよ。でも、まずは竹内洋岳氏を知るにはちょうどいい1冊。エッセイ風だし、一つ一つの話が1頁に収まり、全部で63話。竹内洋岳氏入門編と言ったところか。

で、本書はプロ登山家としての意識を強く出しているような気がするよ。竹内氏の思いは、山の魅力を多くの人に知ってもらいたいということ。それがプロ登山家としての自分の役割の一つだと強く意識しているのだと思うよ。

ということで、幾つかを紹介。
まずは、「登山ほどすべての者にフェアなスポーツはない」ということ。

初心者でも経験者でも同じように雨が降り、風が吹き、雪も降る。初心者だからといって手加減やハンディがない。初心者は初心者に合った山を選ぶことで、誰もが登山を始めることができる。
と。これが登山の特長だとも。そう、確かに。これは新しい視点だし、竹内氏らしい発想だよね。

もう一つは、「登山は、自分を見つめ直す競技」だということ。

大事なのは自分自身で、出発前にその目標やルール、スタイルをすべて自由に決め、適切な道具を集め、登頂を目指すことです。でもその自由さが自己責任の大きさと表裏一体だと気づくと、途端にその困難さと挑戦の意味がよく見えてきます。
と。そう、あくまでも自己責任。だからこそ、準備であれやこれやを考えるのは楽しいし、帰ってきてからもあれはこうだったとか、次はこんな感じでって考えるのは、また楽しいよね。

いや、竹内氏の本で、登山の楽しさをまた再認識いたしました〜。

頂きへ、そしてその先へ
頂きへ、そしてその先へ竹内 洋岳

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初代 竹内洋岳に聞く/塩野米松

初代 竹内洋岳に聞く (ちくま文庫)』を読んだよ。登山に対する思いが伝わる。

作家で聞き書きの名手と言われている塩野米松氏がプロ登山家の竹内洋岳氏をインタビューし、その様子をまとめたもの。インタビューなので、聞き手との会話があるはずなんだけど、いわゆる独白として編集されているよ。
内容としては、『登山の哲学』と重複する部分が多いんだけど、こちらの方がかなり詳細まで語られいるよ。基本的にインタビューなので、語られた内容は編集していないんだろうね。

インタビューの時期は、2008年1月から2009年7月まで。つまり、竹内氏が2007年のガッシャブルムIIでの雪崩事故で大きな怪我を負った後から。この段階で8000m峰を9座登頂しているわけで、その後インタビュー終了時は12座まで登頂に成功しているよ。

そして、インタビューは少年時代から始まり、高校生、大学生と続いていく。そして、既に大学2年生で最初の8000m峰シャシャパンマ。続けてマカルーに登頂する。ここまでが、組織的な登山(極地法)での登頂であり、この後からアルパインスタイル(無酸素)に変更するよ。それでも、竹内氏は極地法を否定するわけではなく、

誤解している方が多いんですが、アルパインスタイルというものが絶対に優れたものでは全然ないんですよ。なぜか、世の中ではアルパインスタイルというのが、いわゆる究極の進化形であるかのようにとらえられるんですけど、アルパインスタイルというのは、実はアルパインスタイルができる所でやっているだけの話なんです。
そう、マラソンと障害物競走で走り方が違うのと同じこと。極地法でしか登れない山だってあるわけ。でも、アルパインスタイルの方がスマートな感覚だけどね。

そして、エベレスト、K2など、順調に8000m峰の登頂に成功する竹内氏。そして、10座目のガッシャブルムIIでの雪崩事故。事故直後の様子や帰国後の手術、そして入院中の様子を物語る。見舞客は皆が「運が良かった。」と言うけれども、仲間が死亡しているわけで、「運」について考える竹内氏。

それは、運がいいとか何とかって話ではもはやないんです。
うん、分かるような気がする。

最後に竹内氏の山に対する思い。共感した本の話の中で、

あれを読むと「そうなんだ、やっぱ山って、そんな屁理屈をこねて登るもんじゃないんだよ」って思うんです。すごい、山って面白いんだよなって、共感したのはあの本だけですね。
と語る。理屈もなく面白い。そう、それが好きってことだよね。アッシも山が理屈抜きに好きだから。
初代 竹内洋岳に聞く (ちくま文庫)
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左腕の誇り/江夏豊

左腕の誇り―江夏豊自伝 (新潮文庫)』を読んだよ。江夏ってそんなに凄かったんだ。

副題が「江夏豊自伝」。そう、昭和42年から同59年までプロ野球で活躍したあの江夏豊の自伝。自伝とは言っても、波多野勝氏がインタビューなどから構成したもののようだよ。半分以上は波多野氏の文章だし。
そもそもアッシはドラゴンズファンだけど、思わず予約してしまったのは、いわゆる人物伝が好きだからか。プロ野球が好きだということもあるんだろうけど。

さて、本書。自伝の中心は大活躍した阪神時代が中心に構成されているよ。
まずは入団1年目と2年目。これが凄い活躍だったんだね。この時代はアッシ自身が野球を知らなかった頃。しかも2年目は25勝。今では考えられない勝ち数だけど、やっぱり八面六臂の活躍で、先発有りリリーフ有りの登板だったみたい。結局このことが体を壊す元になったんだろうけどね。しかし、その後の江夏は“考えた”。

やはり考えている人間が長持ちするし、勝てる。何も考えずに、感性だけで力任せにやっていると、ある部分が狂うと全部崩れていくんじゃないかな。
と言う。例として登場するのが、日本ハム木田勇工藤幹夫。木田は感性だけで投げていただけ、工藤はキャチャーの言う通りに投げていただけだったと。確かにこの二人、最初は凄い活躍だったけど、あっという間にダメになったような。さらに、あの怪物江川も考えていないと指摘しているよ。さらには江川の解説はヘリクツだとも。そう言われてみれば…。

そして、南海へのトレード。
体調が悪いながらもそれなりの成績を残していたけど、当時の阪神お家芸・内紛の犠牲になったのかもしれないね。当時のゴタゴタが事細かに書かれているけれども、江夏自身はチームの為に戦い、身勝手な振る舞いはしていなかったと語られているよ。

南海も2年でトレード。行き先は広島。
江夏自身は、この広島での3年間が一番幸せだったと言っているよ。確かに優勝しているし、リリーフという役割を自分自身で納得していたので、落ち着いて仕事ができたのかもしれないね。

それでも広島は3年。日本ハムも3年、西武で1年。
この間のトレードの事情を見ていくと、結局江夏自身の取り扱いに困ってのトレードという印象が拭えないんだけど…。日本ハムの場合は、大澤監督自身が「俺と一緒に退団してくれ」って言ったとか。なんか変な話…。

さて、全体を通して懐かしいプロ野球選手の名前が次から次へと登場し、そういう意味でアッシ的はワクワクさせられる楽しい本でした〜。

左腕の誇り―江夏豊自伝 (新潮文庫)
左腕の誇り―江夏豊自伝 (新潮文庫)江夏 豊

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