シンギュラリティ・ビジネス/齋藤和紀

シンギュラリティ・ビジネス AI時代に勝ち残る企業と人の条件 (幻冬舎新書)』を読んだよ。2045年がその日。

「シンギュラリティ」という単語はすでに聞いたことがあり、それを超えると一気に社会に一般化する閾値みたいな印象だったけど、テクノロジーの世界ではそれが2045年ということになっているみたい。その定義は、

カーツワイルは、「テクノロジーの進化のスピードが無限大になる」シンギュラリティが、2045年に到来する、と予言しました。
ということ。ここでポイントなるのが「無限大」ということ。これを理解するには、
それをより深く理解するには、テクノロジーの進化が「指数関数的」=「エクスポネンシャル」に加速していることがもたらすインパクトの大きさを理解する必要があります。
と筆者。ちょっと数学的になるけれども、指数関数をちょっと思い出すだけで、その「無限大」という概念がイメージできるんだよね。
さらに言うと、
そしてそのポイントは、それまでの進歩の継続性を断ち切るように、突然に起こります。そのポイントこそがカーツワイルのいう技術的特異点、シンギュラリティにほかなりません。
ということに。でも、具体的に何が起こるかは、まったく分からないんだけどね。ちょっと、ノストラダムス風…。

そして、実際にシンギュラリティに到達した後、人々の生活はどうなるのか?AIがすべての仕事をこなす世界では、人間としての尊厳は?とかいった哲学的な話になるよね。それに対して、

エクスポネンシャルな社会変化に人間の「心」が追いついていけなかった場合、それは「ユートピア」ではなく、AIに支配される「ディストピア」になってしまうかもしれないのです。
と筆者。やっぱり、そのための準備が必要なるんだろうね。若い人たちは心に留めておいてほしいなぁ…。そして、この変化が現実なんだということをきちんと理解してほしいと思う。いかん、引退モードが入ってしまったわ…。
シンギュラリティ・ビジネス AI時代に勝ち残る企業と人の条件 (幻冬舎新書)
シンギュラリティ・ビジネス AI時代に勝ち残る企業と人の条件 (幻冬舎新書)齋藤和紀

幻冬舎 2017-05-27
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勉強の哲学/千葉雅也

勉強の哲学 来たるべきバカのために』を読んだよ。勉強するのも楽じゃない。

本屋のPOPでは「東大生、京大生が読んでいる!」ということなので、東大でも京大でもないし、ましては大学生なんてとうの昔になってしまったけど、改めて「勉強」について考えようと思い本書。
内容的には、まさに「勉強」を哲学的に考えるということ。それも徹底的に。いや、哲学とは徹底的に考えるってことか…。

で、いきなり結論じみたこと。

勉強とは、かつてのノッていた自分をわざと破壊する。自己破壊である。
と言う。言い換えると、わざと「ノリの悪い」人になることである…とも。ん?これが勉強の定義?って感じなんだけど、この説明が哲学的になされているってわけ。

説明のキーワードの最初が「言語」。言語に束縛された環境から脱し、自由に言語を使いこなそう。それによって、ノリの悪い人になること。それが深く勉強することなんだとか…。

そして、最も重要なキーワードが「アイロニー」と「ユーモア」。もうこの段階で一言で言い表すのは無理。ただ、言えるのはそれぞれを追求していく何となく結論のようなことが見えてくることは確かだということ。

分かりやすかったのは、「結論の仮固定」という考え方。

ある結論を仮固定しても、比較を続けよ。つまりは具体的には、日々、調べ物を続けなければならない。別の可能性につながる多くの情報を検討し、蓄積し続ける。
ということ。これが「勉強し継続する」ということだそうで。最後の「勉強の有限化」という話に繋がっていく。うん、これはイメージできる。

さて、東大生や京大生はこの本を読んで何を思うか…。自分的には、単にこれからも勉強し続けるしかないかな…と。

勉強の哲学 来たるべきバカのために
勉強の哲学 来たるべきバカのために千葉 雅也

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グーグルに学ぶディープラーニング/日経ビッグデータ

グーグルに学ぶディープラーニング』を読んだよ。学ぶというより教えてもらう。

今や人工知能とかAIとか聞かない日はないくらいなほど。そして、その第三次AIブームに火をつけた技術が「ディープラーニング」。
『人工知能は人間を超えるか』はその辺りの流れを追った解説だったけど、ディープラーニングそのものは理解できず。ちょっと情けないかな…。
で、再度理解すべく本書。「グーグルに学ぶ」っていうタイトルなので、事例から理解できるといいなというのが自分的なねらい。

冒頭は「機械学習」の解説。膨大なデータからモデル化を図ること。ここでは、「モデル化」がキーワード。これは分かる。人間の学習も同じようなことをやっているような…。
ただ、そのモデル化もそう簡単ではないわけで、小さな判断を積み重ねていく必要があり、

複数の層の処理を重ねて複雑な判断をできるようにする技術として、深層学習、すなわちディープラーニングと呼ばれています。
ということになるわけ。そこではコンピュータの威力が発揮できる世界になるんだよね。

さらにディープラーニングが注目される理由。

人間が解き方を教えるとなると、最大でもその解き方を教えた人間のレベルまでの仕事しかできないわけです。しかし、コンピューターが自分で解き方を考えると、人間を超える可能性も出てくることになります。与えられたデータから、人間では考えもつかなかったような答えを導き出すこともあるのです。
人間を超える?それって想像できない世界の到来ってことなんじゃないかなぁ〜。怖い…。

そして、グーグルの功績。

佐藤さんは、テンソルフローによる機械学習の利用の広がりを「機械学習民主化が始まっています」と表現します。従来であれば考えられなかったようなシーンで、高度な機械学習の成果が利用できるようになっているためです。
世界中の誰もがAIを使える世界。あっという間にビジネスシーンでの利用が登場している現在、AIはどこに行くのか…。しばらくは目が離せませんなぁ〜。
グーグルに学ぶディープラーニング
グーグルに学ぶディープラーニング日経ビッグデータ

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触発する図書館/大串夏身,高野洋平,高木万貴子,鳴海雅人

触発する図書館―空間が創造力を育てる』を読んだよ。読者も触発される…。

図書館関係者1名と建築家3名による共著。だから、基本的には図書館を空間的に捉えて考えるわけなんだけど、その空間という概念を拡張していくまで考えているのがミソ。そう、ネットの時代において、図書館という囲われた環境のみに情報が囲い込まれている時代ではないからね。
では、そんな時代に、図書館と図書館員は図書館に対してどう考えていったらいいのか?…ということを考えてみようというのが本書。

ということで本書に述べられているキーワードを幾つか紹介。
一つ目は、メディアの連鎖。

一つのメディアで得たきっかけが、次のメディアにつながる。その連鎖に身を任せて空間のなかを漂う。情報のブラウジングと空間のブラウジングの壁がなくなるのです。
と。例えば、本で読んだイメージから、音楽と映像に繋がっていけば、興味と知識の連鎖が広がっていくよね。それが次の知識の獲得にも繋がる可能性も出てくるってこと。図書館はその為のハブにもなり得るよね。

もう一つは、コミュニケーション。

友達同士がそれぞれ思い思いに本を読んでいながら、読んでいる本になんとなくお互いが刺激を受けるのです。図書館は、本を読む人の姿にあふれています。人の顔と本の顔がつながって感じられる体験は、図書館固有のものなのです。
そう、独立系のようであって、そうでもない。微妙な繋がりってあるけど、そんな感覚かな。隣の人の読んでいる本が気になったり、話しかけてみたくなったり。

最後は図書館の未来。キーワードは拡張。

そうなるならば、それは、図書館の新しいアウトライン(領域)の獲得ですし、閉じた空間の概念を超えて、「知が時空を流通する」、つまり時空を超えた図書館の概念が広がるでしょう。
となるみたい。時空を超えた図書館って…なんだか宇宙っぽいけど、楽しみだなぁ〜。
触発する図書館―空間が創造力を育てる
触発する図書館―空間が創造力を育てる大串 夏身 高野 洋平 高木 万貴子 鳴海 雅人

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知の進化論/野口悠紀雄

知の進化論 百科全書・グーグル・人工知能 (朝日新書)』を読んだよ。知の歴史、おさらい。

野口悠紀雄氏の著作物は何年ぶりだろう。もしかしたら、『「超」整理法』以来かもしれない。『「超」整理法』は面白かったという印象が強いので、自分的には、野口悠紀雄氏の名前はいつまでも頭に残っていた感じ。

で、人間が知識をどのように伝達していったか、その歴史を現代まで辿り、その劇的な変化を解説したのが本書。だから、知識の進化というより、メディアの進化なんじゃないかなぁ〜って思うけど。

そして、知識はどのように伝達されていたのか。隠蔽されたのが基本になっていて、徐々に万民に開放されていく。順序としては、印刷技術の発展があり、百科事典の発刊があり、そして、インターネット時代のオープン化。当然、これらの動向には課題があり、難しい言葉で言えば、「排除可能性」と「限界費用」という点からの議論であると筆者。経済活動と知の世界とのせめぎ合いと捉えたらいいのかな。

さらに、Google検索の時代。いつでもどこでも検索できるので、知識は外部にあればよいという議論があるけれども、それは本当だろうか。筆者の答えはNo。

その場合、知識が内部メモリ、つまり自分の頭の中に引き出せていない限り、それを発想に有効に使うことはできません。したがって、アイディアの発想のためには、いまでも多くの知識を内部メモリに持っていることが必要です。
と。そう、やっぱり知識が頭に中にあることで、それから複雑に繋がり合い、新しい発想が生まれるんだよね。

最後は人工知能。人間の知的な活動は人工知能に代替されるのかという素朴な疑問に、

第1章で述べたように、ニュートンの研究動機は、「自分の密かな抑えがたい欲求を満足させること」だったのです。つまり、知識の獲得それ自体が目的化していたことになります。ここでは、知識は最も価値が高い消費財になっています。
と説明しているよ。つまりは、人工知能は知識を消費財として捉えることは有り得ないということだよね。人間の飽くなき探究心って、底知れないわけだ。

さて、これを契機に『「超」整理法』でも、読み直してみようかなぁ〜。

知の進化論 百科全書・グーグル・人工知能 (朝日新書)
知の進化論 百科全書・グーグル・人工知能 (朝日新書)野口悠紀雄

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人工知能は人間を超えるか/松尾豊

人工知能は人間を超えるか (角川EPUB選書)』を読んだよ。境界線はあるのか…。

人工知能(AI)がまたもや脚光を浴びつつあるという。これって「またもや」というのがミソで、印象的にはブームを繰り返しているようにも思える。筆者もそれは分かっていて、本書はそのブームの歴史を辿ることから始まる。

さて、人工知能って現在はどこまで進んでいるのか?今や金融市場ではコンピュータによる高速トレードが常識の世界。とても人間が勝てる域ではないという。でも、電卓が世の中に出た時も、同じだったのではないか。筆者は、

だが、足し算や引き算でとうの昔に人間が電卓に敵わなくなったのといったい何が違うというのだろうか!
と。そう、もう50年も前の話かもしれないね。

では、過去のAIブームとはどんなだったのか。
第一次は、難解な定理を証明するとかチェスで勝利するといった高度に専門的な内容を解決するもの。ただ、大量は知識が必要とするような現実の問題を解決するのは厳しかった。
そして、第二次は、その知識を蓄積し活かしながら、諸問題を解決しようとするもの。だた、これにしても、知識とは膨大であり、それを形式的に記述することが難しいという壁にぶち当たる。
さらに現在の第三次。ディープラーニングという特徴表現学習の技術を使った人工知能が急速に進展しているという。確かに、この特徴表現学習は人間の思考法に近いのかもしれない。それでも、人工知能が人間を超えることはないだろうと筆者。

結局、

人工知能が人類を征服するといった滑稽な話ではなく、社会システムの中で人間に付随して組み込まれていた学習や判断を、世界中の必要なところに分散して設置できることで、よりよい社会システムをつくることができる。それこそが、人工知能が持つ今後の大きな発展の可能性ではないだろうか。
というのが結論っぽい。でも、いつのまにか人間がやっていると思っていたことが、裏ではコンピュータがやっていたなんてことが日常茶飯事になるわけ。それって、本当に人間の価値って何なんだろうと思ってしまう。
人工知能は人間を超えるか (角川EPUB選書)
人工知能は人間を超えるか (角川EPUB選書)松尾 豊

KADOKAWA / 中経出版 2015-03-10
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How Google Works/エリック・シュミット,ジョナサン・ローゼンバーグ,アラン・イーグル,ラリー・ペイジ

How Google Works』を読んだよ。スマート・クリエイティブという人達。

近頃、Google社員の働き方に興味があって、Googleの六本木オフィスを見学したこともあったし、ユーザ会でも働き方改革の話題も有り。そんな状況での本書はタイムリー。
内容的には、副題に「私たちの働き方とマネジメント」とあるように、Googleの経営幹部が自らの会社について書いたもの。Google関連のビジネス本は数多く出ているけれども、本人たちが書いた本はほとんどないとか。そういう意味で必見の書かも。

中心となる話題は「スマート・クリエイティブ」と呼ばれる優秀な社員たちがどんな働き方をしていて、彼らに働いてもらうために経営陣はどういうことを考えているかと述べているよ。

で、スマート・クリエイティブのマネジメントは難しい。当然ながら、従来の経営モデルは通用しない。

というのも、このようなタイプの人間に特定のモノの考え方を押し付けようとしてもムダだからだ。特定の考えを押しつけることができないのであれば、彼らがモノを考える“環境”をマネジメントするしかない。それも毎日喜んで出社したくなるような環境を作るのだ。
という考え方。そう、Googleの六本木オフィスはまさにこのコンセプトを元に設計されているよね。だから、マネジメントは労働時間の管理ではなく、良い意味で働き過ぎになるような文化を作ることなのだと。ポジティブ志向だよね。

こんな環境と文化の会社ではどんなことが起こるのか。

広告の直接の担当者ではなく、しかも広告がうまく機能しなくても何の責任を問われることのない従業員が集まり、週末をつぶして他人がやるべき仕事に取り組み、収益を生むような解決策を作り出したこの一件は、文化の威力を雄弁に物語っている。
ということになる。そして、その成功をやっかむ者もいないと。さらに言うと、これはGoogleの文化ではなく、“スマート・クリエイティブの文化”なのだとも。

そして、かれらスマート・クリエイティブの中から、Googleを蹴落とすような会社を作る者が現れるだろうと言い、それを、

私たちはワクワクしている。
と表現しているよ。いいなぁ、こういう文化。すべてが好循環になるだろうね。我が社も少しでも近づいていきたいなぁ〜。
How Google Works
How Google Worksエリック・シュミット ジョナサン・ローゼンバーグ アラン・イーグル ラリー・ペイジ

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