本物の教養/出口治明

人生を面白くする 本物の教養 (幻冬舎新書)』を読んだよ。教養について考える強化月間。

「教養とは何か?」シリーズ(自分で勝手に名付けたけど)の第2弾。同系統の本を連続で読むことは少ないけど、今回はたまたまタイミングがそうなっただけかな。著者はAPU学長の出口治明氏。出口氏の講演を聞く機会があり、この人は面白いと思ったのが本書を手に取るきっかけ。もっとも、本書の執筆時はライフネット生命保険株式会社代表取締役会長兼CEOだったけど。

早速として、出口氏の教養の定義は、

もし、そう質問されたら、私の答えは「教養とは、人生におけるワクワクすること、面白いことや、楽しいことを増やすためのツールです」という一言に尽きると思います。
ということ。この後に何度も出てくるけど、出口氏の生き方は楽しむこと、ワクワクすることがすべての軸になる。そのために、教養が必要なのだと言っているよ。

さらに、「自分の頭で考える」ためのコツ。
ひとつは「タテ・ヨコ」で考えるということ。「タテ」は時間軸、歴史軸。「ヨコ」は空間軸、世界軸。二次元で考えよと。

「タテ」の発想で先人が繰り返した試行錯誤から学び、「ヨコ」の発想で世界の人々の考えや実践法を学ぶことは、大きなヒントになります。時間と空間を乗り越え、市場の淘汰にさらされてなお残っているものは、合理的な最適解である確率が高いのです。
ということ。至極最もで、先人の知恵、他者の見解は広く知っておくことは新しい発想の土台になるよね。

もうひとつは、「数字・ファクト・ロジック」で考えるということ。言い換えると、「国語ではなく算数で」ということ。これは、物事の本質を捉えるために必要な考え方。

物事の本質は、たいていシンプルなロジックでとらえることができます。なぜなら、人間は本来シンプルな生き物だからです。
と筆者。枝葉末節に陥ると、それはシンプルさには程遠い議論になるからね。ありがちだけど。

後半の「本・人・旅」の話も、教養の為のツールだよね。それぞれの経験を面白がれば、自然に身に付くものだから。あぁ、どれも楽しいよね。一生を掛けての楽しみだな…。

人生を面白くする 本物の教養 (幻冬舎新書)
出口 治明
幻冬舎
売り上げランキング: 4,296

応援クリックはこちら→にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

おとなの教養/池上彰

おとなの教養 私たちはどこから来て、どこへ行くのか? (NHK出版新書)』を読んだよ。リベラルアーツブーム。

いつもの池上彰氏の教養本だけど、単に知識を得る為ではなく、そもそも「教養とは何か?」をそれぞれの教科の観点から事例を取り出して解説し、本書のテーマに沿ってまとめたもの。以前から読みたい本リストには入っていたんだけど、今回、この続編が出たみたいなので、慌てて手に取ったというわけ。

早速だけど、池上氏の教養の定義。

それは「自分がどういう存在なのか」を見つめていくことなのではないでしょうか。「自分自身を知る」ことこそが現代の教養だろうと私は思います。自分はどこから来て、そこに行こうとしているのか。この場合の「自分」とは、文字通りの自分のことでもあるし、日本人あるいは人類のことでもあります。
ここで言う「自分」とは人類って考えた方が分かりやすいかもしれないね。あまり自分自身を考えてしまうと小さな話になってしまうし。もうひとつ、「自分はどこから来て、そこに行こうとしているのか。」は本書に通底するテーマ。それを考えるために、「知る」ということが必要になってくるんだよね。

そして、リベラルアーツ(自由七科)。池上氏は「現代の自由七科」を、「宗教」、「宇宙」、「人類の旅路」、「人間と病気」、「経済学」、「歴史」、「日本と日本人」と定義し、それぞれについて講義する。

そのうちで、自分的に合点がいったのを幾つか紹介。ひとつは「経済学」から、

つまりマルクスは、資本主義が持っている法則を読み解いた上で、その法則に従えば、最終的には資本主義は限界に達して社会主義が樹立されると考えたのです。
というもの。それでも、マルクスはその具体的な手法については言及していないとか…。それが社会主義の課題だったのかも…。

もう一つは「歴史」から、

ですから、私たちが学んだ歴史は言ってみれば氷山の一角で、実はそれ以外にも知られざる歴史がたくさんあるということを、常に頭の隅にとどめておいてほしいのです。
というもの。よく「勝者の歴史」っていうけど、まさにこれだよね。客観性を求めれば、敗者の歴史も、第三者の歴史も必要になるはずだよね。

さて、これだけで「自分はどこから来て、そこに行こうとしているのか。」が分かったとは思えないけど、これらの知識をベースに自分の頭で考えないといけないね。

応援クリックはこちら→にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

夢をかなえるゾウ3/水野敬也

夢をかなえるゾウ3 文庫版』を読んだよ。神様、いろいろ。

ガネーシャシリーズもいつの間にか第3弾。文庫版が出るのを待っていて、ようやく出たので図書館に素早く予約。やっぱり、人気だよね。あっという間に予約多数になったから。

さて、今回はブラックガネーシャ。どうしてブラックかというと、「夢をかなえるためになさなければいけない課題」がよりブラックだから…。いや、あのガネーシャならば、このレベルの課題は出してもおかしくないな…という感じではあったけど。まぁ、ガネーシャ本人がブラックだと言うのだから。

で、ガネーシャは相変わらず、自信満々。カーネル・サンダースエジソンとの逸話を披露し、その流れで、

ムンクくん叫ばせたんも、ワシやで」
と、極めつけの一言。初対面でこんなセリフを吐かれたら、もう一撃を喰らったも同然だよね。

あとは、自分が気に入ったガネーシャの教えを幾つかピックアップ。

「確かに、稲荷様にご利益がある雰囲気は必要かもしれへん。せやけど自分のその考えが間違うてて、むしろワシらが作った像の方にヒントがあるかもしれへんやろ」
と言い、自分の考えを疑ってみることも必要だと。これは多面的に物事を考えるのに必要だよね。自信過剰にならないためにも。

さらに、

「自分らは努力を始めるとき、『我慢』から入るやろ。<中略>…でもな、自分の行動をコントロールするために必要なんは、楽しいことを我慢するやのうて、『もっと楽しいことを想像すること』やねん」
ガネーシャ。ストーリーシンギングによる完全なポジティブ思考だね。これも自分好みの思考法。

今回も新たな神様が登場し、神様対決も楽しかったし、なにより発想法の勉強にもなりました~。

夢をかなえるゾウ3 文庫版
水野敬也
飛鳥新社 (2019-04-26)
売り上げランキング: 2,088

応援クリックはこちら→にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

大学大倒産時代/木村誠

大学大倒産時代 都会で消える大学、地方で伸びる大学 (朝日新書)』を読んだよ。もがき続けるだけ。

大学冬の時代と言われてから、もう何年経つだろうか。その要因は18歳人口の減少にあったわけだけど、そのピークが既に過ぎ、マーケットが縮小しつつあるんだけど、そこからさらに課題が出てくる。それはその縮小率が都会と地方で差異があること。それが地方創生と相まって、話がややこしくなってくる。

と、そんな社会情勢の中で、大学がどうもがき続けているかについて、事例をひたすら並べたのが本書。国立大学、公立大学、私立大学はそれぞれ事情は異なるし、前述の都会か地方かでもまた違ってくる。

各大学が気にするのは大学ランキングという代物。世界的なものから、国内限定まで、各種のランキングが公表されているけれども、その評価の難しさについて、

いかにその大学の教育研究活動を評価するのが難しいかを認識したうえで、大学世界ラインキングを見るのが良いかもしれない。大学を評価するには様々な視点があり、入試偏差値と就職率だけではないことを学ぶ良い機会であることに間違いはない。
と筆者。そう、企業のように単に売上とか株価とかだけではなく、その評価が多面的であるからね。

そして、都会と地方の差異。都会は定員増を認めないなどの政策は話題になっているけれども、それに対する地方大学の生き残り策は、こぞって「地域連携」。

最近のCOC+(「地(知)の拠点大学による地方創生推進事業)は、<中略>大学卒業後の若者の雇用創出など、地方における若者の定着を進めようという意図がはっきりしている。
ということ。「地」と「知」なんて、洒落まで出るには驚くけど、逆に意図が分かりやすいかな。

最後に女子大の動き。一時は「女子大不要論」が唱えられたりしたけど、復活の兆しとも。それはキャリア教育だとか。確かに、労働市場における女性の活用は話題になっているよね。

やっぱり、大学の社会的意義は大きいなぁ。象牙の塔では有り得ないわ。

応援クリックはこちら→にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

NDC(9) : 377.21

データを紡いで社会につなぐ デジタルアーカイブのつくり方/渡邉英徳

データを紡いで社会につなぐ デジタルアーカイブのつくり方 (講談社現代新書)』を読んだよ。「情報アーキテクト」という仕事。

地図が好き。GoogleマップGoogleアースが出た時に、これは楽しいことに使えそうだなと思っていたけど、具体的には思いつかず。せいぜい、昔の写真を日付と場所で整理し、旅行日記的に使えるかなと考えていたくらい。でも、まさに本書に書かれていることがまさにそれ。もちろん、個人的な記録ではなく、もっと組織的、社会的な「作品」になっているんだけど。

まずは、データの視点から。数年前から「オープンデータ」という潮流が流れ始めているけれども、社会はすぐにビジネスチャンスとして目を向けがち。これに対し、

オープンデータ、オープンデータとお題目を唱えていてもダメです。具体的なゴールを示し、人々にオープンデータ化の意義を理解してもらうことが先決です。そのことによってはじめて社会が動きます。ビジネスチャンスはその後で自然に生まれてくるのではないでしょうか。
と筆者。そう、オープンデータは進めるべしだと思うけど、何のため?どう使うの?と具体例が多くあるといいよね。そんな事例が徐々に増えつつあるようには思えるのは嬉しいこと。「あっ、これは面白い」とワクワク感があるし。

そして、オープンデータやビッグデータGoogleアースにつなぐ。筆者は、

こうしたグーグルアースによる空間体験に、さらにユーザ独自のXMLデータを重ねあわせることによって、リアルな実感をともなったコンテンツを実現できるのです。
と言い、「仮想世界と実世界をつなぐ」ソフトウェアであると評価しているよ。そう、実際に筆者が携わった幾つかのプロジェクトを見れば、まさにそれが感じられるはず。

最後に、それらのプロジェクトを総括的に考えると、

多元的な資料を、公平な時空間メタデータにしたがって、グーグルアースというもうひとつの地球=「どこでもない場所」に保管する。このことによって、すべての資料に対して特定の重み付けをせず、ユーザに自由な解釈を許すかたちで提示できるのではないか。最近の僕はそんなことを考えています。
と筆者。そう、恣意的ではない資料として、有効活用できるよね。誰でも自由にどんな解釈でも。まさにオープンデータを超えたオープンサイエンスとして捉えていいかもしれないね。

応援クリックはこちら→にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

挑戦する公共図書館/長塚隆

挑戦する公共図書館: デジタル化が加速する世界の図書館とこれからの日本 (図書館サポートフォーラムシリーズ)』を読んだよ。公共図書館あれこれ。

図書館サポートフォーラムシリーズの一冊。副題が「デジタル化が加速する世界の図書館とこれからの日本」ということで、アジアを中心に世界各地で様々な新しい取り組みを行っている図書館をテーマ別に紹介する本。一応、テーマ別にはなっているけど、図書館の取り組みは多岐に渡り、同じ図書館が何度も登場することもあったり、どの図書館も同じようなことをやっていたり。

では、どんな取り組みがトレンドなのだろうか。
ひとつは、メーカースペース。日本ではファブラボとかいう表現をすることがあるけど、要は「ものづくりの場」。3Dスキャナ、3Dプリンタ、電子ミシン、電子工作機器、動画や音楽編集、はたまた教育用ロボットの貸出とかも。ありとあらゆるものづくりツールがそれぞれの地域や国の特徴を活かして、提供されている感じ。

さらには、デジタル化の進展。
電子書籍、電子ジャーナルはもちろん、新聞の閲覧とか、古典籍までデジタル化して提供する図書館が増えている。資料だけではなく、サービスのIT化も進み、貸出・返却も自動化され、それによる24間開館する図書館とかも登場しているよ。

あとは、地域のコミュニティの場としての図書館も。例えば、屋上に圃場が整備されているとか。こりゃ、驚くわ…。

もっと衝撃的な事例は移動図書館。移動のための手段のひとつが「ゾウ」。応援したくなるよね。やるな~、図書館!頑張れ、図書館!

応援クリックはこちら→にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ

ブレイクスルーの科学者たち/竹内薫

ブレイクスルーの科学者たち (PHP新書)』を読んだよ。異分野をつなぐ力。

たまには理系本を読まないと…と思ったのかどうかは不明だけど、ずっと読みたい本リストに積まれていた本書。著者の竹内薫氏は多作なので、読んでも読んでも追いつく気配なし。それでも、手軽に読める理系本だから、ついつい手に取ってしまうんだよね。そんな1冊の本書は、2010年の発刊ですでに9年も経っており、内容がかなり古くなっている点は否めず。いや、それだけ科学の世界の進歩が早いということなんだよね。

ブレイクスルーの原動力とは何だろうかという観点で、それぞれの科学者の成果を見ていくわけだけど、そこに通底する概念は「異分野をつなぐ力」。ほとんどの科学者は異分野の概念を取り入れたり、ヒントにしたり、融合させてみたり。

では、どんな科学者達が登場するのか。
冒頭は、ノーベル賞を受賞する前の山中伸弥氏。もっとも、ノーベル賞に一番近い科学者として紹介されているけれども。ここでの「異分野をつなぐ力」はコンピュータ。

そもそもコンピュータのプログラミングに明るくなければ、計算によって数万の因子をたった四つに絞ろうなどとは考えない。異分野をつなぐ力は、発想の幅を広げ、誰も気づかない可能性を見せてくれる。
ということ。確かに、遺伝子とコンピュータって相性は良さそうだよね。

さらに、粘菌研究の中垣俊之氏。

だが、中垣の研究には、実際に生きている粘菌のほかに、数学という方法論が欠かせない。生物学と数学をつなぐことにより、われわれは、粘菌の「知性」を自動車道路や鉄道のネットワークに活かして応用することができる。これは、一つの分野に特化していては、決してできないことなのだ。
と生物学と数学をつなぐ。数学は考え方の基盤でもあるってことなんだよね。

紹介の最後は、火山研究の田中宏幸氏。素粒子物理学と地球物理学をつなぐ。そして、「異分野をつなぐ力」とは、

異分野をつなぐ力は、1+1を2以上にする力だ。通常よりも長い修業期間を必要とするが、複数の分野をマスターした暁には、倍以上の威力を発揮することが可能になる。その意味で、若いころに複数の専門分野をきわめることは、将来のブレイクスルーの確率を飛躍的に高めるに違いない。
と筆者。うん、自分もそう思う。ただ、「経験する」ではなく、「きわめる」ことが重要だろうね。のんべんだらりではなく、課題意識を持って。
そうか、まだ遅くはない。今までの経験を組み合わせてみよう。

ブレイクスルーの科学者たち (PHP新書)
竹内 薫
PHP研究所
売り上げランキング: 104,125

応援クリックはこちら→にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ